うたかた

作:千菊丸さん

第19話:邂逅


有輝が行方知れずとなってから3日間。
帝が消えた御所は上から下まで大騒ぎだ。
「何故主上は消えたのだ!有匡殿、あなた様がついていながら!」
有匡は大臣達の責めにただひたすら耐えていた。
「私が探しに行きます。」

馬を走らせて7日、有匡は有輝に関する手がかりも何もえられず、苛立っていた。
(どこにいる・・有輝?)
宇治に着いた有匡は、道行く人に有輝のことを尋ねた。
だが、何の情報も得られなかった。
宇治のまちはずれに朽ち果てた邸があった。
有匡には見覚えがあった。
その邸は昔、火月が暮らしていた処だ。 邸は火月の母・綾香が亡くなった後人手に渡ったが、邸の所有者は都に住み、宇治の邸は歳月とともに哀れな姿となっていった。
有匡は邸にはそぐわない白馬がいることがわかった。
(あれは有輝の愛馬だ。)
有匡は邸の中を慎重に進んだ。
有輝は母屋の、火月が産まれた部屋にいた。
美しい調度品が飾られた部屋は、今はその跡形もなく崩れ落そうなほど朽ち果てていた。
「ここで母上が産まれたのですね。」
有輝は独り言のように有匡に言った。
「私は幼い頃、あなたを父と呼びました。あのときは子ども心に冗談で言いましたが、まさか実の父親だなんて・・」
「有輝・・」
有匡は有輝の肩を優しく抱いた。
「母上は何故、私を産んだのです?私に一生不義の子である苦しみを背負わせるためですか?」
「いや、違う。」
有匡は有輝を見据えて言った。
「火月は私を愛していた。私も火月を愛していた。だからお前が産まれた。私は火月の妊娠を知ったとき、私はお前が不義の子だと一生苦しむよりは、お前の命を絶つことが最善の方法だと火月に言った。
だが火月は、母となる覚悟を決めていた。名聞よりも、子の命を選んだのだ。
火月はお前に苦しみを背負わせようとして産んだわけじゃない。愛する人との結晶を産みたかったのだ。」
「けれど、何故・・何故いままで黙っていたのです?」
「それはお前が物事をわかる時期になってから話そうと思ったからだ。」
有匡は愛おしいそうに有輝を見つめて言った。
「有輝、私はお前を愛している。私の血の分けた分身、そして火月との愛の結晶として。不義の子という負い目を背負わせてしまったことは申し訳ない。だが自分はいらない存在だと思うな。出生にとらわれるな。ただ、私と火月がお前を愛していることだけはわかって欲しい。」
「わかりました、父上。」
有匡と有輝は御所へと帰っていった。






有輝は姿を消すが、有匡の言葉で御所へと帰る。
母は何故自分を産んだのだという問いに、静かに答える有匡。
そして自分と火月が自分を愛していることだけはわかって欲しいと有輝に告げる。
不義の子という事実は変わらないけれど、そのことにとらわれずに、己を磨けばいい。
そして、父母の愛を一時たりとも忘れないようにして欲しい。
これが有匡さんが有輝に伝えたメッセージ。
父として自分の命は大切なものだと教えた有匡さん。







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