|
第15話:亀裂 「火月様、どうなさったんです?あちこち傷だらけ!」 寿子は全身傷だらけで帰ってきた火月を見て叫んだ。 「お・・義・・母・・様・・が・・有・・輝・・を・・」 そう言うと火月は、寿子の胸元に崩れ落ちた。 「火月様、しっかりあそばして!」 火月は全身傷だらけで、膿んでいる傷口が数カ所もあった。 高熱を発し、火月は愛おしい息子の名を、何度も何度も呼び続けた。 弘徽殿女御が、火月中宮が全身傷だらけになり、高熱を発して苦しんでいると、有匡に文を書いた。 文を読んだ有匡は、火月の頭からつま先までの傷痕に、思わず目をそらしそうになった。 (ひどいことを・・一体誰がこんなことを・・) 有匡は火月の手を握った。 「有・・輝・・」 火月はうっすらと目を開け、息子の名を呼んだ。 「有・・輝・・私・・の・・愛・・し・・い・・子・・お・・義・・母・・様・・な・・ん・・か・・に・・渡・・さ・・な・・い・・」 そう言うと火月は意識を失った。 「有匡様、どちらへ?」 怒りで全身が沸騰しそうになりながら、有匡は土御門家へと向かった。 土御門家の庭では、有輝が蹴鞠をして遊んでいた。 「まあ有輝は蹴鞠が上手ねぇ。主上も幼少の頃蹴鞠が上手であらせられたとか・・やはりこれも血筋なのねぇ・・。」 スウリヤが目を細めて蹴鞠に興じる孫の姿を見ていた。 そこへ、怒りで真っ赤になった有匡がやって来た。 「あ、父様ー!」 有輝は有匡に飛びついた。 有匡は有輝に微笑みかけ、有輝を抱き上げた。 「お母様の処に帰りたいか?」 「うん、お母様元気にしてる?」 「今ちょっと病気で寝込んでいるけど、有輝が来たらお母様は元気になるよ。」 「じゃあ、お母様の処に帰る。ここより御所の方がいいや。」 「いまからお母様の処に帰ろう。」 有匡はそう言って有輝を連れて馬に乗ろうとした。 「お待ちなさい!有輝は私が育てるの!あの女に渡しませんよ!」 スウリヤは足を踏みならして有匡に迫った。 有匡はスウリヤを見据えながら言った。 「猟犬をけしかけ火月を傷つけたのはあなたですね、母上。」 スウリヤはビクッと全身を震わせた。 「な、何故それを?」 スウリヤの顔に焦りの表情が浮かんだ。 「母上、有輝は皇子であり、あなたにとっては可愛い初孫・・傍においておきたいのはわかります・・でも母親から引き離すのは、あまりにも残酷すぎます。しかもあなたは、皇子を産んだお前はもういらない存在だと火月に言い放った。 愛人の子だからとあなたはいままで火月に冷たくしてきた。それが入内したら急に火月に優しくして、挙げ句の果てには皇子を産んだ火月を罵り邸から野良犬のように追い出した。 なんという女だ、あなたは。己の権力に執着し、火月から息子を取り上げて・・あなたのような欲の深い女から生まれてきたことが恥ずかしい!」 スウリヤは呆然と有匡を見つめた。 「私はこの家を栄えさせるためにやったことよ。だからあの女の娘をこの家に・・」 「もういい!苦しい言い訳など聞きたくない!!」 有匡はスウリヤに怒鳴り、馬に乗った。 「待って、有匡!母をおいていかないで!」 「あなたは私の母ではない。」 スウリヤはその場で凍り付いた。 「お前など・・地獄に堕ちればいい・・」 蹄の音が土御門邸の門に響いた。 有匡さんがスウリヤに絶縁を言い渡す。 火月に対してひどい仕打ちをしていたスウリヤを見ながら嫌悪感を抱いていた有匡さんは、スウリヤに胸の内を吐き出す。 そして、絶縁を言い渡す。 権力に執着する欲深い母親に愛想を尽かす息子。 その時スウリヤは・・。 ドロドロの展開になります。 |