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第13話;御袴着の儀 有輝はすくすくと母の愛情を受けて成長し、3歳になった。 目がクリクリとして、艶やかな黒髪は稚児の輪にしていた。 「なんだか有匡様の小さい頃にそっくりですわね。」 一時期京の土御門家で有匡の乳母をしていた寿子は、有輝の頭を撫でながら言った。 火月は一瞬、体がこわばった。 「え、ええ、そうね・・」 (寿子は知っているのだわ。有輝が帝の子ではなく、僕とお兄様との間に出来た子だと・・) 「火月様、どうかなさいました?」 寿子が心配そうに火月の顔をのぞき込む。 「いいえ、大丈夫よ。」 そこへ有匡がやって来た。 「あら、お兄様。」 「御袴着の儀の日程を知らせに来た。4日後だ。」 有匡はそう言うと、立ち去ろうとした。 「父様ー。」 有輝がそう言って、有匡の直衣の裾にまとわりついた。 一瞬、気まずい沈黙が麗景殿に流れる。 「いやぁね、この子ったら。有輝、あなたの父様は主上でしょう?」 火月はそう言って有輝を有匡から引き離そうとした。 「ううん、違うよ。有匡様が僕の父様だもん。」 「いい加減になさい!」 有匡の足下にしがみついて離さない有輝を、火月は怒鳴って無理矢理引き離した。 「やだぁ、僕父様と一緒にいたいのに。母様の意地悪!」 ギャァァッ 先ほどまで寝ていた1歳の華月(かげつ)が、有輝の声で起きてしまった。 「もう、あなたが騒ぐから妹が起きたじゃない。あっちへ行ってなさい!」 有輝は有匡の方へと走っていった。 「僕これから父様と暮らすもんね、母様の意地悪!」 火月は麗景殿で寝る暇もなく子育てに身をすり減らしていた。 3歳の有輝はちょうど反抗期だ。 妹の世話にかかりきりの火月に有輝はわざと火月を困らせて関心を惹こうとする。 火月は有輝を怒鳴りつけるばかりだ。 (もう嫌・・いつまでこんな生活続くの?) 火月は育児ノイローゼにかかっていた。 土御門家に帰ることはしなかった。 仮にしても、スウリヤが邪魔者扱いするだけだから。 有輝は有匡と土御門家に帰っていった。 (兄様に育児の大変さを知ってもらわないと。) 「父様、父様、遊ぼうよー」 どこへ行っても自分の後をついてくる有輝を、有匡はうっとうしそうに見つめた。 子守は苦手だ。 しかも自分のことを父と呼ぶ有輝に、腹を立てた。 「私は忙しいんだ。」 有匡は有輝に冷たく言い放ち、突き放した。 「有匡、たまには有輝と遊んでやれ。さあ有輝、じいじと遊ぼう。」 有仁は有輝を抱きかかえて、自室へと連れて行った。 (やれやれ・・) 有匡は父と楽しく遊ぶ有輝を見ながら、頭を抱えた。 火月が有輝を出産した後、有匡は麗景殿へと赴いた。 有輝を抱いたとき、父親の実感が湧いた。 一生この子を守っていこうと、胸に誓った。 腹違いの兄と妹との間に生まれた不義の子であるということを、一生隠しとおしていこうと。 自分を父と呼ぶ有輝が嬉しかった。 けれどもその前に、自分たちの秘密がバレることを恐れて、有輝に冷たくした。 それは有輝を世間の荒波から守るために仕方ないことだった。 1年前に生まれた華月も火月との間に出来た子だ。 (どこまで私たちは罪を犯すのだろうか・・) 有匡はそう思いながら自室へと入っていった。 4日後。 有輝親王の御袴着の儀が盛大に行われた。 外戚の土御門家が幅をきかせて大陸渡りの陶磁器など、高価な品々を帝に献上した。 儀式が滞りなく終わり、宴となった。 「火月、久しいな。元気で何よりだ。」 御所に招待された有仁が火月の顔を御簾越しにみながら言った。 「有輝のやんちゃぶりに私、手を焼いておりますのよ。何かと私を困らせるし、いたずらはするし・・」 火月は日頃の不満を有仁にぶつけた。 「まあそんなに根詰めるな。子どもは育つのが早い。」 有仁はそう言うと去っていった。 有匡は宴の最中に有仁に呼び出された。 「父上、お話とは?」 人目につかない、御所の入口近くで有仁は有匡に言った。 「有輝はお前の子か?」 「はい。」 有仁は有匡の言葉を聞くと静かに目を閉じた。 「火月との子だな。お前達が互いに惹かれ合っていることは火月が入内する前からわかっていた。しかし有輝がこれを知ったらどうなるか・・」 「あの子には秘密にしてください。」 有匡はそう言うと馬で土御門家に戻っていった。 (有輝はいずれ己の出生の秘密を知るときが来るだろう。それまで私が有輝を守らねば。) 有仁はそう決意し、闇空を見た。 赤い月が、出ていた。 ・・・なんだか意味不明な文になってしまった。 有匡さんと火月ちゃんは2人も子どもを作ってしまった。 ということは、毎晩愛し合ってるでしょうね。 有輝が自分の出生の秘密を知ったとき、どうなるのでしょうか。 激しく動揺するのでしょうね。 その時の話は、構想を練って書きますので。 |