うたかた

作:千菊丸さん

第11話:吹雪の中で


12月。
京には雪が降り、都の美しさを一層際だたせていた。
麗景殿では臨月の火月が愛おしそうに下腹部を撫でていた。
「火月様、寒さはおややに障りますから、暖かい処へ。」
寿子はそう言って、火鉢の置いてあるところへ火月を連れて行った。
あれから有匡と火月は一度も会っていない。
火月は自分の都合で一方的に堕胎を勧める有匡に腹を立てていたのだ。
「火月、大丈夫?辛くない?」 禍蛇が火月の下腹部をさすりながら言った。
「大丈夫だよ。最近よく蹴ってくるけど・・・あっ、また」
火月はそう言って立ち上がろうとした。
その時。
バシャッ
火月の足下から湯がしたたり落ちた。
「うそ、予定日はまだ先なのに・・」
しばらくして激しい陣痛が火月を襲った。
有匡は火月の安産の加持祈祷のため、御所に参内した。
既に護摩壇が焚かれ、法師達が経を唱えている。
有匡は護摩壇を焚くと、無心に祭文を唱え始めた。

一方、麗景殿では、火月が陣痛に呻いていた。
「痛い、痛い!」
寿子が優しく火月の額に滴る汗を拭う。
弘徽殿の女御と藤壺の女御が駆けつけてきた。
「火月様、お気を確かに。」
弘徽殿の女御は火月の手を力強く握った。
「大丈夫ですわ、元気な御子が生まれますわ。」
藤壺の女御は火月を励ました。

桐壺の女御は死産を願って文観と加持祈祷をしていた。
(産ませてやるものか。あんな化け猫に、帝の子を産ませてなるものか!)

(痛い・・いつまで続くの?)
火月の前に、死んだはずの綾香が現れた。
「お母様、どうして?」
綾香は優しく微笑み、火月の手を握った。
「頑張るのよ。私はいつでも見守ってますからね。」
そう言うと綾香は消えていった。
「お母様、待って!!」
それから4日間、火月は陣痛に呻いた。
「あぁ、痛いっ!あぁぁぁっっ!!」
「頭が見えてきましたよ!あともうちょっとですよ!!」
「あぁ〜っっ!!」
オギャア、オギャア、オギャア

激しく吹雪の舞う中で、難産の末1人の男の子がこの世に生を受けた。
「皇子様のご誕生ー!」
「火月様、おめでとうございます。」
「赤ちゃんを見せて。」
寿子が火月に赤ん坊を手渡した。
「なんて可愛らしいんでしょう・・」
火月は赤ん坊に乳を含ませながら言った。
有匡は火月が無事男児を出産したと知り、安堵のため息をついた。
後日、有匡によって赤ん坊の名前は「有輝(ゆうき)」と名付けられた。
後の光武帝である。

「おのれぇぇぇ!!」
桐壺の女御は怒り狂った。






火月ちゃん、有匡さんの子を出産する。
これから土御門家は外戚として栄え、火月ちゃんは皇太后として後宮で権力を握ります。
けれども火月ちゃんは本当のことを帝には言い出せないままで・・。
桐壺の女御は呪詛を続けるだろうな。
権力に強い執着を持ち、邪魔な存在(火月)を徹底的に呪詛する、恐い女として彼女を書こうと思ってます。







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