うたかた

作:千菊丸さん

第10話:不義の子


桐壺の女御は、火月が帝の子を妊娠したことを知り、ますます彼女に対する憎しみを募らせた。
(男子を産ませてはならぬ!)
文観と桐壺の女御は毎日護摩壇に立ち、火月に呪詛をかけた。
一方有匡は火月が妊娠したと知り、罪に震えた。
(なんということだ・・私は、妹を犯した・・)
腹違いであっても、血族間との結婚は許されない。
火月に宿っている胎児は間違いなく有匡の子だ。
(なんとかして火月に産ませないよう、説得せねば。)
生まれてくる胎児は不義の子だ。
不義密通の罪は重い。
末代まで子どもが苦しむことになるくらいなら、早めに処置をしなければ。
有匡は直ちに麗景殿へと向かった。
同じ頃、火月はスウリヤからの豪華な祝いの品に困惑していた。
土御門家では塵芥のように火月を扱っていたのに、帝の子を妊娠してくれてありがとうと、礼の文まで添えられている。
『あなたが帝に見初められるのはあなたと会った時からわかっていましたよ。必ず元気な男の子を産むのですよ。』
つまり、お腹の子が男の子だったら、土御門家は外戚として栄える。スウリヤは火月のことなどどうでもよく、家の利益しか頭にないのだ。
(お義母様は私を土御門家を栄えるための道具として入内させたのだわ。)
「有匡様がお見えになりましたよ。」
有匡は手に何か薬を持っていた。
「お兄様、私を祝いに来てくださったの?」
火月は喜びに期待を膨らませた。
だが、有匡が口にしたのは意外な言葉だった。
「鬼灯(ほおずき)の根を粉末にしたものだ。飲め。」
つまり堕胎しろと言っているのだ。
有匡が祝福してくれるものと思っていた火月はその場で凍りついた。
「お兄様、どうしてそんなことおっしゃるの?」
「不義密通の罪で土御門家が末代まで不義密通の罪で苦しめられるし、何より不義の子として生まれてくる子が一生苦しむよりは堕胎した方がいいだろう。帝の子と偽るよりも、いつかはバレるのだから。」
(土御門家、土御門家って・・・お義母様やお兄様は家のことしか考えないの?私のことなどどうでもいいの?)
火月は有匡から堕胎薬をひったくり、庭に投げ捨てた。
「何をするんだ!」
「私は産みますからね!」
火月は大声で叫んだ。
「何よ、不義の子だから産んではいけないというの?家のことしか考えてないの?私は妊娠を知ったとき、嬉しくて天にも昇る気持ちだったのに・・お兄様は母親となる私の気持ちを奪おうというの?
あんな世間体のことしか考えてない腐った家のために、この子を殺そうと思ったの?
そんなの自分勝手よ!この子だって生まれる権利はあるのよ!お兄様、怖いんでしょう?この子が生まれて今の地位が脅かされるのを恐れてるんでしょう?地位なんてくそくらえよ!
この子の父親はお兄様、あなたなのよ!世間体のことしか考えられないの?私のことなんかどうでもいいの?この子は要らない子だから、殺してもいいって思ってるの?
最低よ!この子は今私の子宮で生きてるの!10月10日を過ごして、私たちの前に姿を現すのを楽しみにしてるのよ!胎児だって人間よ、物じゃないわ!」
火月のあまりの剣幕に、有匡はたじろいだ。
「自分勝手なのはお前の方だ!生まれてきた子が親が犯した罪で一生苦しむのを想像したことがあるか?親戚に罵られ、通りを歩いてると石を投げられる姿を想像したことがあるか?すぐに堕ろせ!望まれない子を産んだって、お前は幸せになれない!」
そう言うと有匡は火月の手を引っ張った。
「嫌よ、放してよ!私はこの子を産むわ!幸せになれなくたっていい!この子が望まれない子だって、どうしてわかるのよ?それはお兄様がこの子が邪魔だから堕ろそうとしてるんでしょう?絶対に、私はこの子を産みますからね!!」
そう言うと、火月は蹲った。
「火月様、どうなさいました?」
「赤ちゃんが・・赤ちゃんが・・」
火月は流産しかかっていた。
「不義の子だと一生罵られて生きるよりは、今ここで死んだ方が楽かもしれん。」
有匡の余りの無責任さに火月は激昂した。
「何よ、無責任だわ!私とセックスしたのはお兄様じゃない!父親としての自覚を持ってよ!!」
火月は激痛に呻きながら叫んだ。
「火月様あまり興奮なさるとお腹のややに障りますわ。」
結局流産は免れた。
だが火月は有匡に対して不信感を露わにしていた。
(私は絶対にこの子を産むわ!!)
火月は既に母としての自覚を持ち始めていた。






今回はちょっと泥沼な展開になっています。
火月ちゃんが有匡さんの子を妊娠し、中絶を薦める有匡さんと口論する。
産む産まないは女性が考えることですから、一方的に男性が堕ろせなんていうのはあんまりじゃないでしょうか?
妊娠は女性だけで成立するものではないのだし、男性だって責任はあるでしょう。
自分の責任を棚に上げて、女性に堕ろせなんて言う方がおかしいですよ。
妊娠を望まないんだったら、避妊をするなり、家族計画を立てたりなどしたりした方がいいんじゃないでしょうか。

そういえば横浜の某クリニックで、中絶胎児の手足を切って生ゴミとして出していたというニュースがありましたね。
人として葬ってあげたりしなかったんですか?
怒りを通り越して呆れますよ。
あんたら一体、何考えてるんだ?

・・ちょっと過激な内容となってしまいました。
横浜の某クリニックの事件は、あまりにも感情的になりすぎてしまって・・。
本当に、不愉快な思いをさせてしまい、申し訳ありません。







第9話へ戻る / 貰いモノは嬉し!へ戻る