| 注:このお話に出てくる団体・個人等の名称が何故か何処かの誰かや何かと酷似しているような気もしないでもないですが、それは偶然の一致です。気にしないで下さい(笑)。 |
|
「んんんイイ天気ね〜♪」
芹沢美弥(17歳)は上機嫌で早朝の通学路を歩んでいた。 手にした花束からは甘い香りが漂い、華やかな気分を演出してくれる。 今日から中間テスト。 殺伐とした教室にこのくらいの潤いを添えても罰は当たらないだろう。 一時間ほど早めに家を出てきたので学校で少し予習も出来るし。 などと、自分の計画性に満足しつつ美弥が校門前に差し掛かったとき。 ガクランを着込んだ男どもがわらわらと大量出現し、彼女を取り囲んだ。 全員詰襟部分に同じピンバッジをつけている。 そこには「生徒会長私設部隊」の文字が誇らしそうに光っていた。 「美弥くん。今日こそは僕と朝のお茶をご一緒してもらおう。積もる話もあるし」 先頭でガクラン部隊を率いている男−生徒会長・秋川光博(18歳)の身勝手な発言に、美弥の眉がきりりと吊りあがった。 「毎朝毎日なぁに勝手な事抜かしてんのよっ! 朝のお茶ならその取り巻きどもとかみっちーファン倶楽部の女の子たちとすればいいでしょ。 あたしを誘わないでよっ」 そう。 秋川会長は、「みっちー」「王子様」「プリンス」等の愛称で女学生に慕われていた。 私設部隊の人数といい、生徒会長二期連続当選の実績といい、そのカリスマ性には確かに目を見張るものがある。 が、その「王子様♪」に執拗に言い寄られることは、彼の美貌や頭脳に興味のない美弥にとっては単なる迷惑以外の何者でもなかった。 「そのつれないところもまた素敵だよ」 いまどきスクリーン上のハンフリー・ボガートくらいしか言わないようなクサい台詞を吐くみっちー会長をジト目で眺めながら、美弥は冷静に状況を計算した。 (中間テストの勉強もしたいし、五分でカタつけないとダメね。此処を突破さえすれば校内は先生の管轄下で会長の怪しい活動は表立っては制限されるからあの校門さえ潜っちゃえば…) だがしかし、校門までの距離は約12メートル。 そこに辿り着くまでには、ひしひしと路上を埋めて一般の生徒や市民の方たちの通行まで邪魔しているこの会長私設部隊をなんとかしなければいけない。 (『みゃあ』にお願いしちゃおうかしら) 思い立ち、鞄に手をやったが、使い魔である『みゃあ』を彼女が封印された鞄から召喚して自分は校内に逃げ込んだところで、使い魔である『みゃあ』と使役者である美弥の精神がリンクしている以上しょうもない疲れは免れない。 そもそも、この「なんか宇宙電波に操られたような壊れた」にーちゃんたちの相手をさせて、綺麗なブルーグレイの毛並みをした可愛い仔猫の『みゃあ』に怪しい電波が移ったらイヤだ。 だからと言って、自分でやるにしても、花束を抱えている以上今日はいつもみたいな大立ち回りは出来ないし。 とそこまで考えて、美弥はちょっとだけ奥の手を使うことにした。 ふぅううううううぅ。 軽く息を吐きつつ、精神を集中する。 周りにある森羅万象の『氣』を集めているのだ。 眉間が熱く感じ始めたところで、かるく息を吸って、一気に『氣』を拡散する。 「覇っ!!」 周囲の人間にいきなり浴びせ掛けられた剣呑な『氣』は、所詮平和ボケの一般的日本人である彼らの動きを止めるには充分だった。 「えいっ!」 その一瞬の隙を突いて、美弥は目の前のみっちー会長を蹴り倒し、群れなす会長私設部隊の連中の頭上を踏み越えて校内に飛び込んだ。 四分五十二秒。 予定通りだ。 「さ、勉強しなくっちゃ♪」 校庭で出会う友人たちと朝の挨拶を交わしつつ、美弥は校内に消えていった。 「くくくくくくくくくくく…」 会長の誘いを避ければ避けるほど美弥の強さは実証されていく。 いつものごとく張り倒されつつも何故か含み笑いを漏らし続ける会長が、更に彼女に対する執着を深めていることは美弥の預かり知らぬところであった。 この後、更に校内ではこそこそとアプローチされ、放課後の校門を一歩出ればまた新たなる戦いが待っていたりする。 頑張れ美弥。負けるな美弥。テストは明日も明後日もだ!! |