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ええっと。この状況はなんなのだろう。 ふむ。空が高く澄んでいて綺麗。 地面は日差しのせいだろうか少し暖かくて、クッションになっている草がやわらかくて気持ちいい。 けど、圧し掛かっているこの重みはいただけない。 ガウリイ。 はて。あたしはなんだってこんな野っ原で、ガウリイなんぞに押し倒される羽目になっているんだか。 ってまあ、現実逃避はそろそろ止めることにしよう。 「ガウリイ?」 返事はない。 相変わらずガウリイの体は重くて、あたしは当然苦しい。 そよそよと風になぶられたガウリイの金髪があたしの首筋をくすぐる。体を竦めようとしてもガウリイの重みに阻まれて、板ばさみになったあたしの体がきしんだ悲鳴をあげた。 「ガウリイッ!!」 叫んでも届かない。 懇親の力で身を捩り、あたしはガウリイの表情を何とか確認しようとした。 そこにあったのは、ひどく穏やかであどけない顔。 あーもうっ。人の体の上ですぴょすぴょ眠りこけるんじゃなーーーーーいっ。 いや確かに、スリーピングかけて無理やりにでも眠らせようとしたのはこのあたしだけど。 ええっとですね、それって今朝の話なのよ。今はもうお昼過ぎてんのよ。 何で今ごろ効いてきたんだか。精神状態と即効性に関係を検証してみる価値はあるかもしれないわね。 おっと、そんな場合じゃなかった。 うんせこらせと、あたしはガウリイの下から文字通り這い出す。 やっとこさ自由の身になったときは疲れきってしまって、なーんかねえ、何もかもどうでもいいやって気分になっていた。体の節々が痛いし、倒れたときに打ちつけて痣になってる箇所もあるだろうから、ちっと恨めしい気持ちもなくはないが。 ここ最近、ガウリイはほとんど寝てない。なかなか面倒というかややこしい依頼にあたってしまった為、ガウリイには何度か徹夜を強いたのだけれど、実はそれだけが原因ではない。事実、依頼を果たし終えたのは三日も前の話なのだから。 他でもない。あたしのせいだ。でも、ガウリイだって悪い。 ドジって怪我したのはあたしせい。でもそのことに責任を感じて、夜も神経研ぎ澄まして起きてるなんて、馬鹿よ馬鹿。大馬鹿もいいとこ。 そりゃまあ、それなりにひどい感じの怪我だったから、ガウリイの気持ちもわからないじゃないのよ。いてもたってもいられないというか神経が高ぶるでしょうよ、確かに。だから、眠りたくても眠れないってのが正直なところなんだろうけど。 でもあたしはすぐに完治して、今はすっかり元気なの。気にしすぎだって。 朝ならおそらく気が緩んでいるだろうとスリーピングを唱えてみたものの、ガウリイに変化はなかった。朝の爽やかな一時ですら気を抜いてないんだから、つくづく感心するわ。仕方ないから気が済むまでほっとこうと思ったのよ。 んで、街道をてくてく歩いてたら、森の奥に気持ちよさげな河原が見えたもんだからちょいと寄り道した。 水のせせらぎに心落ち着けて、心地よい風に身を任せて、ぼんやり突っ立っていたところに影が差し、ガウリイが倒れこんできたというわけだ。 うーん、流石のガウリイものどかな雰囲気にノックアウトってか。 さてどうしたもんかしらね。 うつ伏せで死んだように眠り込んでいるガウリイを見下ろしていると、あたしの口元がみるみる緩んでくる。はたかた見たら怪しい人だわ、きっと。 しゃがんで頭をなでてみてもぴくりとも動かない。これは、起きるのを待つしかないわね、うん。でもそれだと次の町には今日中にたどり着けない。 そうね、いいわよ。たまには計画的野宿なんてのも。 ガウリイの隣に寝そべって目を閉じる。 あたしとガウリイを掠めた風が、青空へと吹き抜けていった。
Fin. |