「眠り姫」

作:ナーヤさん♪

 昔々ある国に、ゼロスという王様と、フィリアという王妃様がおりました。
「ちょっと待って。どうして私が、ゼロスなんかと夫婦をしなければならないんですの?」
「え、フィリアさんひどいなあ。あれだけ熱烈なプロポーズをしたのに、忘れちゃったんですか?あなたは喜 びのあまり、僕によっかかって......。」
「あれは、気絶したっていうんです!」
(ゼロス、一体どんなプロポーズをしたんだ?ま、まあいい。続けよう。)
 仲のいい夫婦でしたが、二人には、子どもがいませんでした。
「誰が仲のいい夫婦だというんですか!」
「まあまあ、フィリアさん。喧嘩するほど仲がいいというじゃないですか。まあでも、あれだけフィリアさんが拒絶すれば子どもができるわけないですけど。」
「なんであなたとのあいだに子どもを作らなければいけないんですか!」
(...ドラゴンと魔族とのあいだに、そもそも子どもなんてできるのか?しかし、この二人に話させると話が進まんな。)
 そこで二人は神様に、子どもが授かるように、お祈りしました。
「一体どの神に祈ったんですか?たしかスィーフィードって、滅んでますよねえ。」
「そんなの火竜王さまに決まっているじゃないですか!私はその巫女なんですから。」
(もう、巫女はやめたんじゃなかったのか?)
 すると、神様は二人に子どもを授けてくれました。
(一体何処から、手に入れてきたんだ?)
 それは、金髪碧眼のきれいな男の赤ん坊でした。
「「おとこ―?」」
「姫って、女の子じゃないんですか?」
「ええ?絶対リナさんだと思ってたのしみにしていたのに.........」
(.........リナが大人しく寝ているような性格か?それに、捕らわれのお姫様なら、ガウリイの方がなれているだろう...と、いうことらしい。)
「まあ、確かにそうですよね。」
「リナさんだったら、自分で起きちゃいそうですよねえ」
(ここにリナがいなくてよかったな。)
 二人に待望の赤ちゃんができた事で、国をあげての盛大なお祝いがされる事になりました。そのお祝いには、近くに住む妖精達も呼ばれ、盛大な誕生会が行われました。
(初めて、一度に二文言ったな。)
 招かれたお礼に、妖精達は一人ずつ男の子にお祝いをあげることになりました。
「ガウリイさんの小さいころって、初めて見ましたわ。可愛いですわね。」
「シルフィールさんそれよりもお祝いをあげないと進みませんよ。」
「わかりましたわ。じゃあ、この子は将来わたしが惚れてしまいそうなくらいかっこいい男性になりますわ。」
「...シルフィールさん、思いっきり趣味にはしってません?まあ、いいですけど。」
「じゃあ、あたくしは他の人が比肩できないほどの剣の腕をさし上げてよ。」
「それは、あなたの旦那さんも勝てないということですか?」
「もちろんそうよ!......あ!」
「そうやって、ザングルスさんはガウリイさんには勝てない事になったんですね。」
「ま、間違えちゃったのよ!だいたいあんなところでゼロスが声をかけるから.........」
「それで、アメリアさんは一体どんな贈り物をくれるんですの?」
 その時、広間の入口で騒ぎが起こりました。招かれなかった妖精が現われたのです。
「おーほっほっほっほ。私を招かないとは一体どういうことなのかしら?」
「「「「だれ(です、ですの)?あなた。」」」」
「あ。グレ―もが。」
(「だまってろ。アメリア。ここでお前が口を出したら、余計ややこしくなる。」)
「わかりましたから口から手を離して下さい、ゼルガディスさん。」
(「あ、ああ。」)
「そう、誰も私を知らないというのね。いいわ。だったら、呼ばれなくてもしょうがないわよね。まあ、せっかく だから、お祝いをあげてもいいわよ。」
「随分怒ってますよお。とりあえず、近づきたくないです。」
(「なら、近づかないでおけ。」)
「そうねえ、20歳になった時に眠り込んで、永遠に起きなくなる、というのは、面白いかもしれないわね。」
(「シナリオ、変えたな。」)
「めんどくさいと思ったんじゃないんですか。だって、わざわざイトツムギなんか用意するんですから。」
(そもそも、糸紡ぎが何なのか、知っているのか?)
「そういえば、それ、なんなんですか?食べ物だったら一人占めしようとか、呟いてましたけど。」
(「.........」)
「じゃあ、そういう事だから。おーほっほっほっほ。」
 高笑いを残し、妖精は帰っていきました。残された者達は呆然としました。
「そりゃ、呆然ともするわよ!何よ、なんなの?あの女。」
「あの、というよりも、さっきの事自体、何だったのか、わからないんですけど...」
「結局、ガウリイ様が20歳になったら、永遠に寝てしまうって事なんじゃないでしょうか?」
「そうなのですか?」
(「まあ、その通りだな。」)
 その時、のこった妖精が赤ちゃんの傍に近づきました。
「私からのお祝いは、20歳になって寝入ってしまった後、彼のもとまで辿り着いたもののくちづけで、目が覚めるというものです!」
(誇らしげだな。まあ、正義だの何だのといわないだけましか。)
「あのお、素朴な疑問なんですけど、もし、その辿りついた人が、くちづけをしなかったら、どうなるんです?」
「それは.........(絶句)」
「やっぱり、目覚めないんじゃないかしら。」
「そうなると、ガウリイ様は目覚めないままって事じゃないですか。」
(確かに。あいつが素直にそんなことをするとは思えないしな。)
「ま、まあ、先のことですし、その時になれば、どうにかなりますよきっと。」
(「どうにかなるあてでもあるのか?アメリア」)
「ないですけどお。」
「まあでも、今話し合ってもしょうがないということだけは確かですよ。先、進めませんか?ゼルガディスさん。」
(「そうだな。」)
 そして、王子は(まあ、姫じゃないから、こう呼ぶ事になるんだろうな)すくすくと成長していきました。成長した王子は妖精達が言った通り、かっこよく、比べる者がいない程の剣の達人になりました。
(だからって、この話では何の役にもたってないがな。)
「やっぱりガウリイ様はかっこいいですわ。」
「確かにね。ま、私のザングルスには劣るけどね。」
「でも、剣の腕では確実にガウリイさんの方が上ですよね。」
「ゼロス!もとはといえばあんたのせいじゃないのよ!」
「心外ですねえ。僕は何もしてませんよ。ただ、マルチナさんがお祝いを言った時に、確認しただけですし。」
(.........先すすめるか。)
 20歳になる前日、城は翌日の誕生パーティーの準備で、大忙しでした。そんな中、王子は、王に呼ばれ一本の剣の柄をもらいました。
「これは、光の剣といって、まあ、正確には烈光の剣というのですが、これは(うんぬんかんぬん)...あの、きいてますか?」
「ぐうううう。あ、話し終わったか?」
「...............まあ、いいですよ。これ、誕生日祝いにさし上げます。」
「......柄だけじゃあ意味ないと思うんだが......」
「.........光よ、と叫んでみて下さい。」
「光よ。お、すごいなあ、これ。」
(何か、いまいち盛り上がりに欠けるな。まあ、この組み合わせならしょうがないか。)
「明日はあなたの誕生会なんですからね。寝過ごさないでくださいよ。」
(呪いの事、忘れきってるな。)
 そして、王子が20歳の誕生日を迎えたその朝、彼は、目覚めませんでした。
「全く、あれほど寝坊するなって言ってましたのに。」
「本当に。ちょっと乱暴ですけど、たたき起こしましょうかしら。」
「...フィリアさん、それで、たたくんですか...目が覚める前に違う世界にいってしまうんじゃあないですか?」
「それより、モノ・ヴォルトでもしてみましょうか?」
「それは、起きるんではなく反射で体が動くだけじゃあなくって?」
「え、そうなんですか...ところでシルフィールさんは?」
(本命が来る前にくちづけをされると困るからという理由で城の外に出されてるらしい。)
「じゃあ、城の中に入ってくればいいだけの話ではないんですか?」
(「外、見てみろ。」)
「どれどれ。...すごい事になってますねえ。」
「何か、植物のつたばっかで、全然他の風景が見えないんですけど。空まで、見えませんよ。」
「落ち着いてる場合じゃありません。私たちも外に出れないんですよ。」
「つまり、リナさんが来て、ガウリイさんにくちづけするまで、僕たちは外に出れないって事なんですか?」
(「まあ、そういうことだな。」)
「「「「えー!」」」」
(さて、じゃあ、次はリナの方だな。)
 いばらで覆われたお城の中で、くちづけを待って寝ている王子の噂はあっという間に、国中に広がりました。
「知っているかしら。いばらで覆われた城の中で王子が寝ていてそこまで辿りついた人のくちづけで目が覚めるそうよ。」
(噂を流したのは、こいつか。)
「で、それがあたしとどんな関係があるのよ。いばらで覆われて誰も出入りができないんでしょ。別に王がいなくても、あたしは困ってないし。」
「相変わらずねえ、リナ。でも、あのいばらを取り除いたら、きっと城から、褒美が出るわよ。王子もなかなかの美形だというし、うまく行けば、玉の輿よ。」
「玉の輿?...そうね、嫌なら褒美だけもらうってのもありよね。」
「そうそう。ちなみに分け前は半分ね。」
「折半?.........そうね、あなたが何らかの役に立ったら、折半でもいいわよ。」
「そう。じゃあ、決定ね。」
「いきなりスリーピング♪これですべてあたしのものね。」
(あいかわらずだな。)
「さあ、そうと決まったら、さっさとお城に急ぎましょ。」
(絶対さいごのくちづけに関しては忘れきってるな。)
 お城の周りはいばらが取り囲み、誰も入る事はできないように見えました。
「うーん、じゃあ、しょうがないなあ、植物からす呪文はしらないし...しょうがないから、ドラグスレイブでふっとばすしか......」
(「待て待て待て、話は最後まで聞け。」)
「あ、ゼルじゃない。冗談に決まってるわよ。で、続きは。」
(「今、本気でやろうとしたように見えたが」)
「そんな事ないってば、ほ、ほらほら続き続き。」
 彼女がいばらの前まで近づくと、不思議な事に、いばらは自ら動いて、お城までの道を開けてくれました。
(「まあ、確かに吹っ飛ばされたり枯らされたりするよりは自分で避けるわな。」)
「なんかいった?ゼル。」
(いや。それよりいいのか、進まなくて。)
「そうね。お宝が待っているんだし。さあ、さくさく進むとしますか。」
 こうして、なんなく彼女はお城の中へと入る事ができました。
「あ、リナさんだ。リナさーん、お久しぶりです。」
「あ、アメリアじゃない。何やってるの、こんなところで。」
「私もいてよ。」
「え?マルチナに、ゼロスにフィリア。みんな揃って何やってるの?」
「リナさんを待ってたんです。」
「何で?」
「ガウリイさんにくちづけしてもらうためですよ。リナさんがガウリイさんにくちづけをしない限り、僕たち城の外に出れないんですよ。」
「魔族のあんたなら簡単に出られそうだけど。」
「ゼロスが出られても私たちは出られないんです。お願いですリナさん、ガウリイさんにくちづけをしてもらえませんか?」
「...いやよ!なんで私がガウリイなんかにくちづけしなきゃいけないのよ。」
「絶対いうと思ったわ。リナ、いい加減素直になったら?私とザングルスみたいに」
「あなたたちもおかしな組み合わせよね。だいたい素直にって何よ。」
「まあまあ、喧嘩しないで。そうですね、リナさん、光の剣、欲しくないですか?」
「光の剣?あの伝説の?魔族ですら切れるという?」
「そうです。それ、欲しくないですか?」
「もちろん欲しいわよ。何処、何処にあるの?」
(「既に目の色が変わってるな。」)
「ですね。」
「ガウリイさんが持ってますよ。つまり、ガウリイさんを起こしたらあなたのものになるんじゃないですか?」
「そっか、ガウリイを起こせばいいのね...って、やっぱ口付けする事には変わりないんでしょ。いや!」
「......リナさんが嫌がっているのはガウリイさんに口付けする事なんですか?それとも、させられる事なんですか?」
「どっちもよ!」
(「...リナに素直になれって言うのがもともと無理な相談だったんだ。最初の前提からして、この話が間違っていたとしか思えん。」)
「え、では、私たちはずっとこのままってことなんです?」
「僕としては嬉しいですよ。フィリアさんと一緒にいられるなんてねえ。」
「傍に寄らないでちょうだい、生ゴミ魔族。」
「いい加減、その呼び方は止めて下さいませんか?フィリアさん」
(「まあ、そんな事はともかく...リナ、この城から出れないのはお前も一緒なんだぞ。いい加減覚悟を決めたらどうなんだ?」)
「んな事言われても、やなことはやなの!」
(「じゃあ、しょうがない、伝言だ。―いくら抵抗したって、最終手段があるんだから、大人しく素直にしてしまった方が自分のためだと思うよ― という事だが、どうするんだ。」)
「絶対に嫌!」
(「ならばしょうがないか.........リナ、うらむなよ。」)
 彼女はそっと、眠っている王子様の傍に近寄りました。整った顔立ちに長いまつげ。彼女は枕元に立ち......
「何で、身体が勝手に動いているのよ!」
「......なるほど、そういう手があったんですね。」
「アメリア、感心してないで、どうにかしてよ。」
「そう言われてもリナさん、リナさんがガウリイさんにキスしてくれない限り私たち外に出られないんですよ。」
「そうそう。ここは諦めて、大人しく従う事ね。」
(「だから自分でやった方がいいといっただろ。
(おれだって読むのは嫌なんだ)どうするんだ?」)
「.........わかったわよ。やるわよ、やればいいんでしょ。ただし!みんな向こう向いててよ!」
「はいはい。」
 リナは眠っているガウリイを見て、瞳を閉じ、モノ・ヴォルトの呪文をとな......
(「こら待て、何をする気だ?」)
「起こせばいいんでしょ、起こせば。」
(「そんなことをしても起きないぞ。」)
「でも、ほら一回ははねおきるわ。」
(「それは反射と言うんだ。―いい加減諦めないとこっちで勝手にやっちゃうよ―という事だが、どうするんだ?」)
「勝手にすればいいじゃない!」
(ふてくされてるな。)
 彼女は高鳴る胸を押さえ、そっと枕元にかがみ込み、瞳を閉じて、静かに王子の唇に自分の唇を...
「わかったわよ!自分でやるわよ。」
 リナは盛大に文句を言ってから、枕元にかがみ込み目を閉じ、ガウリイに顔を近づける。一瞬だけ、互いの唇が触れた。
「これで、いいんでしょ!」
 王子は目を開け、自分の周りに大勢人が集まっているのを見て、驚きました。
「ちょっと待って、何であんた達こんなに近くにいるのよ。」
「それはもちろん、近寄らないと見えないからに決まってるじゃないですか。」
「ゼロス、あんたねえ。」
「なあ、今、一体どういう状況なんだ?」
「ああ、ガウリイ、あなた今まで妖精の呪いで寝入っていたのよ。それがリナのキ...」
「メガ・ブランド」
「あーあ。ガウリイさんとマルチナさん、とんでっちゃいましたね。」
「それよりゼロス、約束の光の剣は?」
「ああ、あれですか。あれは......」
「ガウリイさんと一緒に飛んでっちゃったんじゃないんですか?」
「...どうも、そうみたいですね。」
「そうみたいですね、じゃないわよ。どうしてくれるのよ。乙女の純情を...」
「でも、吹き飛ばしたのはリナさんですよ。僕に言われても.........」
「探しに行ったら、どうです?」
「そうですよ。城からの出入りも自由になった事ですし...」
(「まあ、自業自得だな。」)
 こうして、彼女は王子様を探しに旅に出る事となりました。

 めでたし、めでたし。

「ちっともめでたくなんかなーい!!!!!」

おしまい♪


CAST
進行・語り:ゼルガディス
王子様:ガウリイ 姫:リナ 王様:ゼロス 王妃様:フィリア 
妖精その一:シルフィール その二:マルチナ その三:アメリア その他:ナーガ



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