セレナーデ
〜グラフィティシリーズ〜

作:秋月和至(おうぢ)さん

〜Haruichiパート


「なぁ、なんでお前らまでいるんだよ。」
俺は呆れ顔で、言葉を吐きだした。
「なに言うてますねん。予定トレーニング切り上げてきたってるんやで、 わいらに感謝してくれてもいいくらいでっせ。」
隣でかき氷をむさぼるジョーシマ。
「そうだよ、ハルちゃん。キャプテンにばれたら、俺らグラウンド20周なんだしね。」
その隣のタカシが、ポテトフライを食っている。
遠足か?今日は。
「ま、まぁ、とりあえず、みんな揃って松岡君の応援しようってことでいいじゃない。」
あわてて、松岡と反対側の俺の隣に座る、長瀬が言う。
そらそうだな。俺は納得した。
そう、ここは市民球場。
親友の応援に来なくてどうする!!
練習も大事だが、応援も、もっと大事だ!!
いかに、キャプテンといえども、俺のこの思いは、曲げられない。
「今日は、俺は誰がなんと言おうが、ヒカルの応援するぜ!!」
声たからかに、宣言する。
「は、ハル君。」
長瀬が、ちょんちょんと申し訳なさそうに、俺の肩をつつく。
なんだよ、せっかく、良い感じで気持ち盛り上がってきてるのに!!
「そうか、じゃぁ、帰ってグラウンド20周な。」
こ。こ、こ。この声は!?
「「「「東山先輩!!!」」」」
みんなの声がハモる。
これは、確実に、ゴスペラーズに勝った!!
と、それはさておき、なんで東山先輩がここに!?
「三人とも、今すぐ帰って練習だ。………と言いたいところだが。」
と、言葉を止めて、空を見上げる。
「今日は特別だ。応援していいぞ。ただし明日の練習は、今日の分も上積みする事。以上だ。」
「「「はぁ〜い」」」
肩が落ちた三人の声がハモる。それを、クスクス笑いながら見る長瀬。
くそぉ〜。
可愛いじゃねぇ〜かよぉ!! 「まぁそういう事だ。わかったな。」
と言って、東山先輩は、タカシの隣に座る。
その手には何故か焼きソバ!! えっ?先輩も観戦ですか?? マジっすか・・・・・・・・・・・。
「俺の友人も、試合に出るからな。」
そ、そうなんですか・・・・・・。
でもいいのか、サッカー部のレギュラーが4人も抜けてて。
サボり筆頭の俺のいうセリフじゃねぇなぁ。
まぁ、東山先輩が良いと言ったから、いいんだろう。
しかし、長瀬、高校野球のファンとは、趣味が渋いな。
小学校から、夏は高校野球とともに、宿題をはじめて、 高校野球とともに終わるタイプだったらしい。
俺なんかは、高校野球がおわったころから、宿題やりだすタイプだったから、 ていうか、今でもそうなんだけどな・・・・・・・。
でも、なんで、高校野球のファンなんだろうか?
今日は、たまたまジョーシマが、誘ったみたいなんだが、聞いてみようか? が、その時、

ウゥゥウウウウウウウウウゥゥゥゥン!!!!

耳にツンと響くサイレン音。
グラウンドでは、選手が集まり整列している。
さぁ、試合開始だ!!
「頑張れ!!ヒカルゥー!!」
俺も声を張り上げる。
それに続くように、応援が始まる。
さすがに準決勝ともなると、かなり生徒も集まってるよな。
さて、どうやら、うちの高校は後攻らしい。
いきなり、ヒカルの登板かよ。
大丈夫か?こんな大舞台でいきなり先発なんてよ。
俺の考えと裏腹に。
雄雄しくマウンドに立つ背番号11。
あいつ、あんなにオーラでてたっけな?
俺の知らない、俺の見た事が無いヒカルがそこにいた。
ビュン!!バシィ!!
小気味良く、リズムの良い投球が行われている。
審判が手を上げる、試合開始だ!!!
ヒカルが投げる。
閃光のように球がミットに収められていく。
あいつあんなに球が速かったっけ?
「少し、力みすぎてるかもな。」
東山先輩の小さな呟き。
俺もそう思う。
案の定5回、ヒカルは肩で大きく息をし始めた。
さすがに準決勝。ふた周りもすれば、相手もヒカルの球筋を読んで来る。
相手を攻める強気のピッチング。
その分、甘い球があれば、見逃されない。
キン!!
金属音が響く。
ボールは、弧を描き、スタンドに吸い込まれていく。
大きく肩を下とすヒカル。
「頑張れ〜ヒカル!!」
俺や、タカシ、ジョーシマの声が響く。
長瀬は、膝の上で、ギュっと、手を握り締めている。
まだ試合は半分じゃないか!!
しかし、回は無常に進み、ランナーを背負いながら、 ヒカルは投げつづける。
たった一点。その一点が遠い。
そして、9回裏。
キン。ヒカルがセンター前にはじき返す。
ノーアウトのランナーだ。
送りバント!!
ヒカルは、セカンドを奪取する。
続く打順で2番バッターが、セーフティバンド。一塁線を転がる。
ライン上で止まるボール。
ワンアウト1塁、3塁チャンスは続く。

カキィ〜〜〜〜〜〜〜ン!!
大きな金属音を残して、白球は高く舞い上がる。
センターが、落下位置に立つ。
十分タッチアップは可能だ!!
センターが取ったと同時に、ヒカルは、ただ、ホームへ向けて駆けて行く。
ボールは、真っ直ぐに帰ってくる。好返球だ!!
飛び込むヒカル!!
クロスプレーだ!!


・・
・・・・
・・・・・・・・

アウト!!!
審判は、そう高らかに宣言する。
その場にしゃがみこんで動けないヒカルを抱き起こすナイン達。
ヒカルの、高校2年、夏の甲子園への道は終わった。

「俺は、帰るよ。明日の練習は遅れるなよ。」
そういい残すと、東山先輩は静かに席を立って、去って行った。
「ハルちゃんどうする?」
タカシが、言った。
「さて、ヒカルの残念会でも開いてやろうぜ!来年こそは甲子園だってな。」
俺は立ち上がった。
「おう、ほなハルイチ君家で、今日はもりあがらなあかんなぁ。
じゃぁわいが、おやつでも仕込んでくるわ。金は、あとで徴収するさかいに。」
ジョーシマが、足早に駆け出して行った。
「ハルちゃん、じゃぁ俺はみんなの、飲み物買って来るよ。長瀬ちゃん、襲っちゃだめよん。」
「な、なにいってんだよ!!!」
ウインクしながら、階段をおりて行ったタカシに叫ぶ。
「ったく、なにいってんだか。なぁ、長瀬。」
俺は長瀬の方を見る。そこには、うっすら頬を染めた長瀬が。
あぁ〜、意識するじゃねぇ〜かよぉ〜。
と、お互いなにかギクシャクしたまま、帰り道に着いた。
会話は、ほとんど出来なかった。
せっかくの二人きりだというのに。
タカシの奴、変な事言うからだぞ!!
その日は、みんな、なにかを忘れるぐらいに盛り上がった。

タカシも、ジョーシマも、トモエも、ヒカルも長瀬も、俺も。
ただ笑いあい、話あった。
親友とはかくあるべきだね。ほんとにな。


そして、一週間が経った。
今日はコンサートの日。駅で長瀬を待つ。
沢山の人の流れ。夕暮れが無機質な街を照らす。
そこに、ピンクのキャミソールとジーンズという、 魅惑の衣装に身を包んだ長瀬が来た。
やべぇ。いろんな意味でやべぇ。
「おまたせ!どうしたの?ハル君。」
そんな無防備で近づかれると、緊張するだろ!
「いや、なんでもないぜ。」
しごく冷静に言う。
「人多いな。」
「うんそだね。」
俺の言葉に長瀬が答える。
「はぐれないように、しなきゃな。」
俺は、長瀬の手をとる。
「は、ハル君?」
慌てる長瀬。
「手つなぐの嫌か?」
「そ、そんな事無いよ。」
取り繕う長瀬。
「じゃ、行こうぜ、あんまり時間無いしな」
俺は、長瀬の手を引いて歩きだした。
「さて、ここか、H−13。」
俺はチケットと、座席の表示を見比べる。
間違いない。
「すみません。
と、座る人を横切ろうとしたその時。
「遅いなぁ、ハル」
この声は!!
「ヒカル!!」
俺は、それ以上の言葉を失う。
「なんでお前がこんなとこに?なんて顔すんなや。」
呆れた声のヒカル。
「大体俺らがチケットとったんやで、そのぐらい考え〜や。」
はぁ。とため息までつくヒカル。
ムカツク!!そら、頼んだのは俺やけど、並びで取るなよ。
「こんばんわ。松岡君。」
長瀬が会釈する。
俺の手が、長瀬と繋がれてるのに気がついて。
「なかなかいい感じやなぁ。お前らも。」
なんて笑顔を作る。
くそぉ、結局こいつの手の上でおどってたのかよ、俺は。
まだまだ、修行不足だな。
「あ、これはハル君が迷子にならないようにって。」
あわてふためく長瀬。
「ハルイチ君!チヒロちゃん!やっと来たんだ!!」
はいはい、トモエだね、この声は。
「あ、トモエちゃん!こんばんわぁ。」
長瀬は俺から手を離すと、トモエと抱擁する。
いいなぁ、女の子は、気軽に抱擁できて。
「まだまだやな、お前らは。」
というヒカルの呟きを聞きながら、席についた。

トモエと、長瀬の会話はまだ終わりそうになかった。




Fin.

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おうぢさんのコメント


夏は終わり次回は秋です。
いよいよ話は佳境に向けてまっしぐら??
いろいろな人間関係が動き出す予定!!(笑)
ジョーシマ君がメインかも?
今回出番の少ない、チヒロとサヤも
出番は多いと思われます。
ヒカル!テンション低いぞ!!(爆笑)




キャライラストとプロフィールを頂きました。
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