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「エリザベスから君のことは聞いてるよ。まるで兄のように頼もしい存在だと。」
ルドルフの言葉に、フランソワの眉がつり上がった。 「僕も、あなたのことを風の噂で聞きましたよ。」 「ほう?」 「女性をゴミのように捨てて、浮き名を流していらっしゃるとか。」 ―なんということを・・ ―皇太子様に向かって・・ フランソワの言葉に、まわりがざわめく。 「やれやれ、そんな風に言われているとは・・」 ルドルフはそう言ってククッと笑った。 「うまいお世辞よりも、直接罵られる方が好きでね。」 金色の髪をなびかせながら、ルドルフは余裕の表情で言った。 「そろそろ失礼しても?」 「ええ、構いませんわ。」 「今日はあなたと過ごせて嬉しかった。」 そう言ってルドルフはエリザベスの手にキスした。 「私はなんとしてもエリザベスを手に入れる・・」 フランソワの耳元で、ルドルフは囁いた。 「望むところです。」 スイス宮にある私室に戻り、ルドルフはフランソワの怒りに燃える瞳を思い出した。 あの青年は、エリザベスに惚れている。 だが使用人ごときに、エリザベスを渡すわけにはいかない。 エリザベスは自分にとって、運命の相手なのだから。 エリザベスにとって、19年間の闇を照らしてくれた一筋の光。 王族ではないが、ハプスブルク家にはふさわしい家柄。 これまで多くの女性と浮き名を流してきたが、心はいつも空っぽだった。 だがエリザベスと一緒にいると、心が満たされる。 彼女を守ってやりたいと、心から思う。 (来るなら来い。私は必ず、エリザベスを妻にする。) (エリザベス様は渡さない、あんな男なんかに!) ホテルの部屋で、フランソワはルドルフへの怒りに燃えていた。 Novel&Message by 千菊丸さん |