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1877年8月21日、オーストリア・ウィーン。
オーストリア=ハンガリー帝国皇太子・ルドルフ=フランツ=カール=ヨーゼフ=フォン=オーストリアは、19歳の誕生日を迎えた。と同時に、エリザベス=ローズワースは20歳となった。 ホーフブルク宮では、ルドルフの生誕を祝う催しが行われていた。 「エリザベス様と皇太子様は、お似合いのカップルだわ。」 「誕生日が同じだなんて、なんて不思議なんでしょう。」 「そうね。これは主のお導きなのかもしれないわね。」 「そうね。」 エリザベスとルドルフは、宴の主役だった。 「今日は素晴らしい日になりますよ。」 ルドルフはそう言って微笑んだ。 エリザベスはルドルフに微笑み返した。 「前からおききしたかったのですが、背中の槍傷は・・」 ルドルフはそう言ってエリザベスの槍傷を指さした。 「これは生まれた時からあるんです。私の先祖にあたるドルヴィエ家の初代当主・アンヌ様にも同じ傷があったとか・・」 「詳しく聞きたいですね。」 フランソワは広い王宮に戸惑っていた。 エリザベスに告白しようと、レイチェルの協力を得てホーフブルク宮にやってきたのだが、エリザベスがどこにいるのか、全くわからない。 エリザベスと会えるのは、今日で最後かもしれない。 皇太子との結婚が決まったら、彼女は雲の上の人だ。 生まれた階級が人生を左右する時代。 エリザベスのことは、諦めるしかないのだろうか? フランソワは顔をあげた。 エリザベスと結ばれなくてもその想いを伝えることはできるはずだ。 王宮を歩いていると、人にぶつかった。 「すいません・・」 「誰かと思ったら、エリザベスの尻を追っかけてる使用人じゃないか。」 バカにしたようにジャスティンが言った。 「ご主人様の尻を老いかけに来たのか?」 こんなところで、最悪な人物に会ったと、フランソワは思った。 Novel&Message by 千菊丸さん |