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ウィリアムはエリザベスが社交界に全く顔を出さないことに腹を立てていた。
「どういうつもりだ・・全く、私に恥をかかせるつもりか。」 ローズワース家にとって、エリザベスをオーストリアの皇太子妃とすることが今後の繁栄に繋がるだろうと、ウィリアムは思っていた。 セシリアのことをふと思い出した。 美しい黒髪の持ち主で、美しかったセシリアだが、彼女との結婚は政略結婚だった。 ウィリアムには、結婚前に付き合っていたシャーロットという女性がいた。 シャーロットは、金髪紅眼の、優しい女性だった。 それに対して、セシリアは気性が激しい性格であった。 ウィリアムはセシリアのことを嫌い、シャーロットの所に入り浸るようになった。 レイチェルは、シャーロットとの子だ。 そして、フランソワも。 フランソワはセシリアと結婚する前に出来た子だ。 シャーロットが肺結核で亡くなり、フランソワを使用人として引き取り、育ててきた。 セシリアはフランソワに辛く当たった。レイチェルのことは溺愛していたが。 エリザベスは自分とフランソワが異母兄妹だということを知らない。 (まぁ、いい。) エリザベスは、ベッドの中でまどろんでいた。 隣には、フランソワがいる。 なんという幸せだろう。 こんなに満ち足りた気持ちははじめてだ。 エリザベスは夜着を羽織り、ベッドから下りた。 窓の外には、ウィーンの街が夏の朝日に照らされ、輝いている。 あと4日で、自分はまたひとつ、歳を取る。 そして、ルドルフの妃に・・。 このままずっといられたのなら、どんなにいいだろう。 エリザベスは、涙を流した。 (フランソワと離れるなんて、耐えられない・・) 「エリザベス様?」 朝日の光で、フランソワは目を覚ました。 窓際にはエリザベスが立っていた。 「どうかなさいましたか?」 「いいえ、なんでもないわ。」 そう言ってエリザベスは涙を拭い、フランソワに向かって微笑んだ。 Novel&Message by 千菊丸さん |