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エリザベスはルドルフにお茶会に誘われた。
「いままでどうされていたのですか?社交界ではお見かけしませんでしたが・・」 「ちょっと疲れがたまって、休んでおりましたの。」 エリザベスはそう言って優雅なしぐさでカップを取った。 「このところ私、忙しくて自分の時間もとれませんでしたの。それに・・」 「それに?」 「私、社交界が嫌いですの。あそこはなんだか息苦しくって。」 エリザベスはカメオのネックレスをまさぐった。 「あそこには、人のあらゆる負の感情が渦巻いてて、爆発しそうな所で・・見たくないものまで見てしまいますの。」 「そうですか・・」 エリザベスは、『力』を持っている。 普通の人間とは違う『力』が。 社交界や宮廷は、彼女がいたくない場所なのだ。 「私も、皇太子ではなくウィーンの一市民として生きれたらと、時々思うこともあります。」 「皇太子様はいずれ、この国をお治めになる方。そのためには、自分を殺さなければいけない時もあるでしょう。」 エリザベスはそう言って、ルドルフの手を取った。 「あなたといると心が安らげる。」 ルドルフはそう言って笑った。 「あなたのことを、もっと知りたいのですが。」 「そうですか。では全てお話しますわ。」 フランソワがウィーンに着いたのは、昼頃だった。 お腹が空いたのでホテルのカフェに行くと、そこにはルドルフと談笑しているエリザベスがいた。 フランソワの胸が痛んだ。 『お嬢様とあたし達の世界は違うんだ。』 エルザの言葉が、フランソワの頭の中にこだまする。 (お嬢様は、あの方と結婚される・・) フランソワはルドルフの方をチラリと見る。 聡明かつ眉目秀麗な皇太子を。 そして由緒あるハプスブルク王家の出。 それに比べて自分は孤児で、社会の最底辺にいる使用人。 (僕はお嬢様と釣り合わない・・) フランソワは、静かにその場を立ち去った。 紅い瞳に、涙をためながら。 Novel&Message by 千菊丸さん |