PURE

第四幕
『晩夏』

第18話


作:千菊丸さん
エリザベスはルドルフにお茶会に誘われた。
「いままでどうされていたのですか?社交界ではお見かけしませんでしたが・・」
「ちょっと疲れがたまって、休んでおりましたの。」
エリザベスはそう言って優雅なしぐさでカップを取った。
「このところ私、忙しくて自分の時間もとれませんでしたの。それに・・」
「それに?」
「私、社交界が嫌いですの。あそこはなんだか息苦しくって。」
エリザベスはカメオのネックレスをまさぐった。
「あそこには、人のあらゆる負の感情が渦巻いてて、爆発しそうな所で・・見たくないものまで見てしまいますの。」
「そうですか・・」
エリザベスは、『力』を持っている。
普通の人間とは違う『力』が。
社交界や宮廷は、彼女がいたくない場所なのだ。
「私も、皇太子ではなくウィーンの一市民として生きれたらと、時々思うこともあります。」
「皇太子様はいずれ、この国をお治めになる方。そのためには、自分を殺さなければいけない時もあるでしょう。」
エリザベスはそう言って、ルドルフの手を取った。
「あなたといると心が安らげる。」
ルドルフはそう言って笑った。
「あなたのことを、もっと知りたいのですが。」
「そうですか。では全てお話しますわ。」
フランソワがウィーンに着いたのは、昼頃だった。
お腹が空いたのでホテルのカフェに行くと、そこにはルドルフと談笑しているエリザベスがいた。
フランソワの胸が痛んだ。
『お嬢様とあたし達の世界は違うんだ。』
エルザの言葉が、フランソワの頭の中にこだまする。
(お嬢様は、あの方と結婚される・・)
フランソワはルドルフの方をチラリと見る。
聡明かつ眉目秀麗な皇太子を。
そして由緒あるハプスブルク王家の出。
それに比べて自分は孤児で、社会の最底辺にいる使用人。
(僕はお嬢様と釣り合わない・・)
フランソワは、静かにその場を立ち去った。
紅い瞳に、涙をためながら。









Novel&Message by 千菊丸さん


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