PURE

第四幕
『晩夏』

第17話


作:千菊丸さん
ルドルフはホーフブルクの私室でエリザベスのことを想っていた。
皇太子という地位は、常に重責と息苦しさだけがつきまとう、苦痛以外の何物でもなかった。
病弱だったルドルフは、いつもそのことで周囲から自分の出生を疑われ、陰口を叩かれた。
『本当に陛下の子どもなのかしら?』
自分は誓ったのだ。
父のような皇帝になろうと。
そのためなら、どんなこともすると。
ルドルフは、寝台に倒れ込んだ。
シールに、黒く長い髪が一本あった。
エリザベスのもの。
ルドルフは髪の毛をハンカチ包み、引き出しにしまった。
「フランソワ、またウィーンに行くんだって?」
侍女頭のエルザがそう言ってフランソワに微笑んだ。
「ええ。お嬢様が来て欲しいとおっしゃられたので。」
「そうかい。お嬢様はあんたを気に入っているものね。」
そう言ってエルザはフランソワの肩を叩いた。
「あんたは結婚とか考えたことあるかい?」
「エルザさん、どうしたんですか?」
「あんた、お嬢様のこと好きなんだろ?」
エルザの言葉に、フランソワの頬が紅くなった。
「その様子じゃ、そうなんだろ?」
フランソワは頷いた。
「フランソワ、あたしはあんたがどれだけお嬢様のこと好きか知ってる。」
エルザはそう言ってフランソワの肩を叩いた。その表情は、少し悲しげだ。
「でもね、よく考えてごらん?あんたは孤児の使用人。お嬢様はオーストリアの皇太子妃となられる方だ。
どんだけ愛しても、お嬢様とあたし達の世界は違うんだ。そのことを知らないあんたじゃないだろう?」
「お嬢様が・・オーストリアの皇太子妃に?」
「ああ。なんでも皇太子様が気に入られたとかで。」
フランソワは後ろから頭を殴られたような衝撃を受けた。
「だからもう、エリザベス様のことは諦めな。」
エルザはそう言って厨房へと戻っていった。
フランソワは、しばらくそこに立ちつくしていた。









Novel&Message by 千菊丸さん


戻る / 貰いモノは嬉し!へ戻る