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エリザベス達は当初予定していたウィーン滞在を1週間から3ヶ月へと延長した。
それはウィリアムがエリザベスとルドルフの縁談を進めたいということと、8月21日のルドルフの誕生日までに2人を婚約させようという思惑があった。 エリザベスは朝から晩まで休むことなく社交界に顔を出していた。 慈善会でエリザベスは『力』をあてにされ、令嬢達に自分の未来を占って欲しいと始終せがまれた。 だがエリザベスは、パイ売りに集中して彼女たちを無視した。 「ねぇ、あの方って、とっつきにくいとは思わないこと?」 「そうねぇ・・わたくし達の話にものってこないし。」 「あの人は何だか感じが悪いわね。」 レース編みの集まりでエリザベスは令嬢達の悪口を聞き流していた。 エリザベスは人と群れるのが嫌いで、何かの集まりには必ず欠席した。 社交家で陽気なレイチェルとは違い、エリザベスは1人でいることを好んだ。 なのでエリザベスににとって社交界はこの世で1番嫌いな所だった。 嫉み、ひがみ、憎しみ、敵意・・ 麩の感情が渦巻くそこは、彼女の『力』が過剰に反応してしまう。 見たくないものまで、見てしまう。 エリザベスはレースを編みながらため息を付いた。 (私はいつになったら、この場に馴染めるのだろう。) 造り笑顔を浮かべて、愛想良く振る舞って。 これ以上、自分は周囲に何を望むのだろう? ふとエリザベスは柱時計を見た。 この邸に来たのは朝の10時なのに、今は晩の7時だ。 レース編みの道具をしまい、エリザベスは帰り支度を始めた。 「エリザベス様、もうお帰りになられるの?」 この集まりを主催したレーニエ公爵夫人がレースを編む手を止めた。 「ええ、体調ですぐれなくて・・申し訳ありませんけど、失礼いたしますわ。」 「まぁ、無理をさせてしまいましたわね。ホテルでゆっくり体を休まれてくださいな。」 「ありがとうございます、奥様。」 エリザベスはレーニエ夫人の集まりには、2度と出なかった。 ウィリアムは商用でインドへ行くことになり、エリザベスはようやく社交界から解放された。 エリザベスはフランソワをウィーンに呼び戻し、また元のきままな生活へと戻っていった。 レース編みをして、のんびりと過ごすことが、エリザベスにとっての安らぎだった。 Novel&Message by 千菊丸さん |