PURE

第四幕
『晩夏』

第15話


作:千菊丸さん
何故、こんなに胸が苦しいのだろう。
私はいままでフランソワのことを想っているはずなのに。
エリザベスはベッドで寝転がってガストンを撫でながら、ルドルフに抱き締められた時のことを思い出した。
あの時、ルドルフに温かいものを感じた。
亡くなった母のような優しさを。
舞踏会で目が合ったとき、ルドルフには自分と同じようなものを感じた。
深い孤独
生まれつき超能力を持ち、人に恐れられてきたエリザベス。
生まれながらにして全ての富と権力を持ち、家族愛に恵まれなかったルドルフ。
ルドルフとは、何か運命的なものを感じる。
だが、自分が愛しているのはフランソワだけ。
母・セシリア亡き後、力のある自分に苦しむ度に、慰めてくれたフランソワ。
いつしか互いに恋心を抱くようになっていた。
貴族と使用人という、許されぬ恋であっても、フランソワとエリザベスは密かに愛し合っていた。
今、一番フランソワにいて欲しかった。
自分が心から愛している存在はフランソワのはずなのに、何故気持ちが揺らぐのだろう。
自分がどうしたいのかわからない。
エリザベスは寝返りを打った。
なかなか眠れず、エリザベスはバルコニーへ出た。
ウィーンの空には、美しい満月がのぼっている。
また明日も、社交界を連れ回されるのだろうか。
父にはうんざりしていた。
ウィリアム=ローズワースにとって大切なものは、自分の地位や名声を築き、権力を持つこと。
そのふたつを成し遂げるために、彼は家庭を顧みなかった。
ふと、不幸な結婚をしたセシリアのことを思い出した。
母は13歳で結婚し、人生の中で最も美しい時期を、出産と育児でふいにしてしまった。
母が育児で必死になっている時に父は愛人のところに行っていた。
やがて母はうつとなり、肺結核でこの世を去った。
母はエリザベスのことを真に理解してくれる、唯一の人だった。
エリザベスの『力』のことも、母は理解してくれた。
父は、エリザベスを自分の権力の道具としか考えていない。
父は一度も、自分を愛してくれなかった。
エリザベスはベッドに戻り、深い眠りに就いた。









Novel&Message by 千菊丸さん


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