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何故、こんなに胸が苦しいのだろう。
私はいままでフランソワのことを想っているはずなのに。 エリザベスはベッドで寝転がってガストンを撫でながら、ルドルフに抱き締められた時のことを思い出した。 あの時、ルドルフに温かいものを感じた。 亡くなった母のような優しさを。 舞踏会で目が合ったとき、ルドルフには自分と同じようなものを感じた。 深い孤独 生まれつき超能力を持ち、人に恐れられてきたエリザベス。 生まれながらにして全ての富と権力を持ち、家族愛に恵まれなかったルドルフ。 ルドルフとは、何か運命的なものを感じる。 だが、自分が愛しているのはフランソワだけ。 母・セシリア亡き後、力のある自分に苦しむ度に、慰めてくれたフランソワ。 いつしか互いに恋心を抱くようになっていた。 貴族と使用人という、許されぬ恋であっても、フランソワとエリザベスは密かに愛し合っていた。 今、一番フランソワにいて欲しかった。 自分が心から愛している存在はフランソワのはずなのに、何故気持ちが揺らぐのだろう。 自分がどうしたいのかわからない。 エリザベスは寝返りを打った。 なかなか眠れず、エリザベスはバルコニーへ出た。 ウィーンの空には、美しい満月がのぼっている。 また明日も、社交界を連れ回されるのだろうか。 父にはうんざりしていた。 ウィリアム=ローズワースにとって大切なものは、自分の地位や名声を築き、権力を持つこと。 そのふたつを成し遂げるために、彼は家庭を顧みなかった。 ふと、不幸な結婚をしたセシリアのことを思い出した。 母は13歳で結婚し、人生の中で最も美しい時期を、出産と育児でふいにしてしまった。 母が育児で必死になっている時に父は愛人のところに行っていた。 やがて母はうつとなり、肺結核でこの世を去った。 母はエリザベスのことを真に理解してくれる、唯一の人だった。 エリザベスの『力』のことも、母は理解してくれた。 父は、エリザベスを自分の権力の道具としか考えていない。 父は一度も、自分を愛してくれなかった。 エリザベスはベッドに戻り、深い眠りに就いた。 Novel&Message by 千菊丸さん |