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ルドルフ成人祝いの舞踏会で、貼り付いた笑みを浮かべた。
財産目当ての令嬢。 媚びを売るためだけに来た貴族。 うんざりする。 皆笑みを浮かべて、腹の黒いのを隠して。 皇太子−いずれは皇帝となる人物−に媚びを売って損はないだろうという卑しい魂胆。 華やかさの裏に潜む、黒い感情。 「ルドルフ様だわ・・」 自分の姿を見つけるやいなや、騒ぎ出す女達。 その中で、隅にたたずむ女が1人。 濃紺のドレスに、真珠のネックレス。 フロイデナウ競馬場で会った女(ひと)だった。 ルドルフは、女の元へと歩いていった。 エリザベスは、広間の隅で視線を避けるようにして立っていた。 肩が丸見えになったドレスをっちいに無理矢理着せられ、背中の傷があらわとなる。 まるで彼女を罰しているように。 音楽や、人々のざわめきから逃れたい。 コツコツと、靴音がしてエリザベスは振り向いた。 彼女の前に立っていたのは、皇太子のルドルフだった。 紺の燕尾服を着て、蒼い瞳でエリザベスを見つめている。 「ルドルフ様、こちらは私の娘で、エリザベスと申します。失礼ですがフロイライン、どこかでお会いしましたか?」 「ええ、フロイデナウ競馬場で・・」 その時、エリザベスは父を見た。 ウィリアムは娘にウィンクしている。 (お父様、あなたという人は・・) エリザベスの中で、父に対する激しい憤りが渦巻いた。 「どうかさないましたか?」 ルドルフがけげんそうな顔をして言った。 「いいえ・・」 「1曲、踊ってくださいませんか?」 「喜んで。」 エリザベスとルドルフは、好奇心に駆られた人々の輪の中で、踊り始めた。 エリザベスはルドルフの手が触れた時、ルドルフの幼い頃が見えた。 愛されることも知らず、孤独に包まれた日々。 (私と、似ているわ・・) 自分と同じものを感じる。 −これは運命なのなのか− エリザベスはルドルフとの出会いに偶然と思えぬものを感じた。 Novel&Message by 千菊丸さん |