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エリザベスは体が動かなかった。動かすと、背中に激痛が走った。
彼女は手探りでフランソワの手を探した。フランソワの血にまみれた手の感触を感じた。 「フランソワ・・」 エリザベスがフランソワの手を握ると、フランソワが握り返してきた。 「お・・嬢・・様・・」 フランソワが生きていることに安心して、エリザベスは気を失った。 エリザベスが目を覚ますと、そこは病院のベッドの上だった。 「エリザベス、気が付いたか?」 「お父様、私・・」 起きあがろうとすると、背中に激痛が走った。 「無理をしてはならん!お前は背中をひどく打ってるんだ!」 エリザベスは事故に遭ったことを思い出した。 「フランソワは?」 「フランソワは無事よ、お姉様。」 レイチェルは興奮している姉の手を握った。 「無事なの?彼は今、どこにいるの?」 「お姉様の隣よ。」 エリザベスはフランソワの寝顔を見ると、安心して眠った。 その後エリザベスとフランソワは順調に回復し、2ヶ月後、2人はホテルへと戻った。 ただし、エリザベスは背中に醜い傷が残った。 ウィリアムはエリザベスとフランソワが駆け落ちの最中に事故に遭ったと知り、フランソワをロンドンの邸に帰らした。 エリザベスはまた、舞踏会漬けの日々を送った。 1877年7月27日。 エリザベスがベッドで横になっていると、ウィリアムが彼女をたたき起こした。 「たまにはゆっくりさせてくださいな。」 「今夜はルドルフ様の成人祝いの夜会だ。ぐずぐずしていないで支度しろ。」 エリザベスは不機嫌な表情を浮かべながら、ホーフブルク宮の広間にいた。 ーあれが皇太子様の・・ ー背中に傷がある・・ 女達の視線が、エリザベスの背中にまとわりつく。 ため息をついてエリザベスは広間から出ていこうとした。 その時。 「ルドルフ様だわ・・」 女達が急に騒ぎ出した。 振り向くと、そこには金色の髪と蒼い瞳をした青年が立っていた。 自分の目の前に立っている青年が、フロイデナウ競馬場で会った青年にと同一人物であることに気づくのに、エリザベスは少し時間がかかった。 Novel&Message by 千菊丸さん |