PURE

第四幕
『晩夏』

第11話


作:千菊丸さん
フランソワはエリザベスのことを想っていた。
独立心が強く、クールな性格に隠された彼女の弱さを、支えたいと思った。
家の中で自分に対等に扱ってくれるのは、エリザベスだけだった。
幼い頃に母を亡くしたフランソワにとてエリザベスは妹のような存在であった。
2歳下のエリザベスにいつしか、恋心を抱くようになっていた。
エリザベスもまた。フランソワを想っていた。
幼い頃から兄のように自分を守ってくれたフランソワ。
10代になると、彼の存在を意識し始めた。
今は彼を愛している自分の心に気づいてしまった。
だが、皇太子との縁談はエリザベスの意志を無視して進んでいる。
逃げよう、今なら間に合う。
エリザベスは家族に気づかれないように荷物をまとめ、フランソワを起こした。
「フランソワ、起きて。」
「お嬢様、どうなさったんですか?」
旅行鞄を抱え、外套に身を包んだ。
エリザベスを、フランソワは目を丸くして見ていた。
「すぐに支度して。逃げるのよ。」
「逃げるって・・どこへです?」
「遠くによ。」
数分後、身支度を終えたフランソワはエリザベスと共に辻馬車へ乗り、ウィーン西駅へと向かった。
「どこに行きます?」
「インドに行きましょう。あそこなら私達を知る人は誰もいないわ。」
ウィーン西駅に着くと、2人はナポリ行きの切符を買った。汽車は既にホームに止まっていた。
エリザベスとフランソワは、1等席に座り、夜明けまで眠った。
「フランソワ、これからはずっと一緒よ。」
「ええ。」
エリザベスとフランソワは、しっかりと互いの手を握った。
汽車は順調にプラハを走っていった。
エリザベスとフランソワは朝食のサンドイッチを食べて、眠ろうとしていた。
その時、空気を切り裂くような甲高い音がして、車内が激しく揺れた。
その頃、ルドルフは目を覚ました。
「ルドルフ様、大変です!」
「何ごとだ?」
「ウィーン発ナポリ行きの汽車が、プラハ市内で脱線したそうです。」
「・・わかった。」
ルドルフの背中に、冷たいものがはいあがってきた。









Novel&Message by 千菊丸さん


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