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ルドルフはロシェクから渡された書類に目を通していた。
フロイデナウ競馬場で会った女性の名前は、エリザベス=ローズワース。 ローズワース家は16世紀フランスの王侯貴族・ドルヴィエ家と政略結婚をし、貿易によって栄華を極め、現在、東アジアを中心に貿易をしている。 エリザベスの父・ウィリアムは25歳の時にセシリア=ウィン=ジョーンズ=ローズワースと結婚し、2年後長女・エリザベス誕生。その3年後、次女・レイチェル誕生。 1872年12月26日、セシリアは30歳の若さで肺結核でこの世を去る。 エリザベス15歳、レイチェル13歳の時だった。 セシリア亡き後、姉妹は乳母・ヘレナに育てられ、現在に至る。 エリザベスは人嫌いで、社交界にはほとんど顔を出さない。 噂によると、エリザベスには超能力があるらしい。 4月にロンドン社交界を震撼させた幼女連続殺人事件の容疑者をエリザベスが言い当て、さらに被害者の遺骨を掘り当てたという。 書類を読み終えたルドルフは、ますますエリザベスに興味を持った。 一度、会ってみたい。 ウィーンに来てから1週間。 エリザベスはウィリアムにあちこち連れ回されていた。 ウィリアムはウィーン社交界に顔を知って貰おうと、エリザベスを『皇太子の婚約者』として紹介した。 目立つのが嫌いなエリザベスは、ほとほと疲れ果てていた。 彼女にとって社交界は、ストレス以外の何物でもなかった。 ホテルに戻るのは毎日明け方過ぎ。 エリザベスにとって唯一の慰めは、ガストンと戯れることだった。 「ああ、私も猫になりたい。」 ベッドに崩れ落ち、ガストンの艶やかな白の毛色にエリザベスが指を滑らしていると、ノックの音がして、フランソワがホットミルクを持って入ってきた。 「お疲れでしょう。」 「ありがとう。」 エリザベスはそう言ってホットミルクが入ったマグカップをフランソワから受け取り、飲み始めた。 「私はゆっくりしたいのに・・」 「旦那様はお嬢様のお気持ちよりも、家が栄えることしか考えていらっしゃらないんです。」 「そうね・・」 エリザベスはそう言うと、肩を震わせた。 Novel&Message by 千菊丸さん |