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アンヌはカリンの手を放さなかった。邸に着くまでずっと。 「お嬢様、旦那様にどう説明なさるんです?」 マリーがおどおどした口調で言った。 「何を恐れているの、マリー?私はいい買い物をしただけよ。」 「ですが・・」 「私、身の回りの世話をする者が欲しかったのよ。ルイーゼはそそっかしくて信用できないし、お前に全て任せるわけにはいかないし。」 アンヌはそう言ってカリンを見た。 「この子なら私のために働いてくれそう。」 邸に着くと、アンヌは馬車の中にとどまり、マリーとカリンが馬車から出た。 マリーはカリンの手をひいて邸に入ろうとしたが、カリンは馬車の前に立ったまま、動こうとしない。 「どうしたの?」 やがて衣ずれの音がして、アンヌが座席から立ち上がる気配がした。 カリンは、馬車の降り口に立ち、馬車から降りるアンヌの手を握った。 アンヌは満足そうな笑みを浮かべ、歩き出した。 マリーの方は、目の前で起きた光景に信じられないといった顔つきで、口をあんぐりと開けている。 「いい買い物をしたわ。」 アンヌはそう言って邸の中に入った。 「お帰りなさいませ、奥様。あらっ、その子は?」 「私付きの小姓よ。今日市場で買ったの。」 アンヌはそう言って、ルイーゼの横を通り過ぎた。 ルイーゼはポカンとしている。 アンヌはカリンをアンヌの部屋から向かい側にある来客用寝室に案内した。 「ここがお前の部屋よ。」 「えっ、こんな豪華な部屋、もらえません。」 天井が高く、壁もカーテンも高級品で囲まれている部屋を見渡しながら、カリンは言った。 「今日からお前は私付きの小姓よ。小姓は主人の近くにいなければね。」 「でも、僕・・」 アンヌはそれ以上言おうとするカリンの口に、手入れされた美しい人差し指をあてた。 「この話はこれでおしまい。カリン、さっそくだけれど着替えを手伝ってくれないこと?」 「は、はい。」 アンヌの後に慌ててついていったカリンは、着替えを手伝っている時に恥ずかしそうに顔をうつむいていた。 「女の裸を見るのははじめてなの?」 アンヌはそう言うといたずらっぽく笑った。 カリンは、アンヌの背中にある槍傷に気づいた。 「あの・・これ・・」 「生まれつきあるの。」 アンヌはそう言うと、ドレスを着た。襟元や袖口には、豪華なレースがふんだんに使われている。濃紺のドレスは、アンヌの黒髪が艶やかに見えた。 カリンはアンヌの艶やかな髪を梳いている時、みだり耳の紅玉のピアスがアンヌの髪にあたった。 「それは?」 「生まれつきあるんです?」 「綺麗な赤だわ。まるで血のよう。」 アンヌはカリンのピアスを眺めながら言った。 その時、ドアがノックされた。 「私だ、アンヌ」 カリンが扉を開けると、モンテリオが驚いた顔で立っていた。 アンヌが着ているドレスは、エリザベス1世が着ているような襟元がえりまきとかげみたいなドレスです。 アンヌ、ただ単に遊び相手が欲しかっただけでは? 年下の男の子を翻弄するアンヌ(笑)。 Novel&Message by 千菊丸さん |