PURE

第四幕
『晩夏』

第7話


作:千菊丸さん
エリザベスとレイチェルがオペラを楽しんでいる頃、ウィリアム=ローズワースはホーフブルク宮で皇帝と会っていた。
「遠路はるばる来てくれてありがとう。」
「いいえ陛下、こんな私のために時間を割いてくださり、ありがとうございます。」
そう言ってウィリアムは微笑んだ。
フランツ=ヨーゼフ皇帝は、エリザベスの肖像画を見た。
「エリザベスは気だての良い子で、私の自慢の娘です。」
「確かルドルフト同じ日に生まれたのだな。」
「ええ、1年違いですが。」
フランツはエリザベスに運命というものを感じたような気がした。
「2人を会わせるのは、いつ頃がいいだろうか?」
「そうですね・・7月の末あたりでも・・」
「それでは遅すぎる。」
「娘達は明日、フロイデナウ競馬場に行きます。そこで会わせてはいかがでしょう?」
「ああ・・しかも偶然を装ってな。」
そう言ってウィリアムとフランツは、互いにほく笑んだ。
その頃、ルドルフはオペラを観ていた。もちろんお忍びでだ。
今夜は舞踏会があるのだが、サボって来た。
一国の皇太子として、当たり前の自由を得られないことに、ルドルフは嫌気がさしていた。
分刻みのスケジュール。
ルドルフは「ハプスブルク」という名の籠に入れられている鳥のようだった。
何故自分が皇太子として生まれたのかと、彼はつくづく思った。
もっと違う人生があったはずだ。
貴族でも、皇太子でもない、一市民としての人生が。
オペラを観ている間、令嬢達がこちらを見ているのがわかる。ルドルフはため息をついた。
ー私はどこにいても安らげない・・
その時、彼の目が煌めきを捉えた。
ふと目線をずらすと、向かい側のロイヤルボックスに、2人の令嬢が座っており、光は令嬢のダイヤのネックレスから発せられたものだった。
令嬢とルドルフの瞳が一瞬絡み合った。
黒髪の、美しい女(ひと)だった。
「・・お姉様、どうかしたの?」
「いいえ、なんでもないわ。」
そう言うとエリザベスはオペラに集中した。
1877年6月1日。
ウィーンオペラ座で、エリザベスとルドルフは偶然居合わせた。
その“偶然”が、後に波乱を起こすことも知らずにー。









Novel&Message by 千菊丸さん


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