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「お姉様、今夜のオペラが楽しみね!」
そう言って、レイチェルは馬車の中ではしゃいだ。 「あなたったら、今朝からそればっかり。」 エリザベスは呆れて言った。 「あら、お姉様だってロンドンを発つ前オペラ座に着ていくドレスをああでもないこうでもないと騒いでいたじゃないの。」 レイチェルは瞳をキラキラさせながら言った。 「全く、困った物だわ・・そう思わないこと、フランソワ?」 「えっ」 突然話を振られ、フランソワは戸惑った。 「お前は自由にウィーン見物してもいいのよ。私も付き合うから。」 「はい・・」 エリザベスはフランソワの手を握った。 「お姉様はいいわね。私にも素敵な人、現れないかしら?」 「ちょっと静かになったら、現れると思うわよ。」 「ひどいわっ、お姉様っ!」 頬をふくらましながら怒るレイチェルに、エリザベスは笑った。 「もうすぐシュテファン寺院に着きます。」 窓の外を見ていた侍女のアグネスが言った。 「わぁ、広いわぁー!」 「教会が狭かったら、神様もおちおち寝てられないでしょ。」 エリザベスは肩をすくめて言った。 ステファン寺院を出てホテルに戻ると、レイチェルは浴室に籠もった。 「オペラ座で運命の人に会うかもしれないじゃないっ!」 「そうかしらね。」 エリザベスはガストンを撫でながら言った。 「お姉様、のんびりしないで来てっ!」 「嫌よ、私は歩きすぎて疲れたの。」 2時間後、レイチェルは浴室から出てきた。 「あなたとはオペラ座で赤の他人となるわ。」 「ひどいわっ、お姉様っ!」 レイチェルは濃いメイクをしていた。 4時になると、仕立屋がドレスを持ってきた。 レイチェルはピンクの真珠が散りばめられたものを、エリザベスは深緑のドレスを。 エリザベスはダイヤの2連のネックレスを首にかけた。 オペラ座の7時の開演には間に合うように6時にはホテルを出た。 「お父様はどこなのかしら?いらっしゃらないわ。」 「仕方ないわよ、お仕事だもの。私達だけで楽しみましょう。」 エリザベスはそう言ってオペラ座に入った。 胸に妙な不安を抱えながら。 Novel&Message by 千菊丸さん |