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「大丈夫?顔色が悪いけど・・。」
モーリア夫人がそう言って、エリザベスに声をかけた。 「いえ、大丈夫です。」 「ここは、辛い場所ね。あなたにとっても、私にとっても。」 モーリア夫人はそう言って目を閉じた。 エリザベスはモーリア夫人が自分と同じような気持ちでこのパーティーを過ごしているのを感じた。 「・・そうですね。ここには人の欲望や負の感情が渦巻いてるわ。私がこんな力を持っていなければ、楽しめるのに・・」 「仕方ないわ。私達は特別なのよ。罪ではないわ。ただ辛いだけ。」 モーリア夫人は、エリザベスの頬に手をあてた。 「ねぇエリザベス、力は罪じゃないわ。神様が授けてくださった特別なものよ。覚えておきなさい。 この世にいらない存在なんて、ないのよ。みんな金や地位、名声で人の価値をしたがるわ。でもそんなのは、ただのゴミよ。本当の価値は、あなたの心にあるのよ。」 モーリア夫人の言葉に、エリザベスの心に溜まっていた黒いものが一気に流れていくように感じた。 パーティーが終わって5日後、夕食の席でウィリアム=ローズワースが突然ウィーンに行くと言いだした。 「ウィーンですって?お父様この間インドからお戻りになられたばかりじゃないの。ウィーンだなんて、急に・・」 「たまには家族3人で旅行しないか。最後に一緒に旅行したのはイタリアのコモ湖ぐらいだろう。」 ウィリアムは仕事で世界中を飛び回っており、家には年に数回くらいしか帰ってこない。 エリザベスとレイチェルの母・セシリアは5年前にこの世を去り、家には2人の乳母であるヘレナと使用人達だけだ。 エリザベスはそれ以上父を問いざさなかった。 3人で旅行なんて、心が躍る。それにウィーンは彼女が行ってみたい街だった。 1877年5月末。 ローズワース伯爵一家は、早めの休暇を取り、オーストリア=ハンガリー帝国の首都・ウィーンへと向かった。 大陸行きの船に乗り込むとすぐに、ウィリアムは船員に電報を打つよう頼んだ。 宛先はオーストリア=ハンガリー帝国皇帝・フランツ=カール=ヨーゼフだった。 「陛下、イギリスのローズワース様から電報が。」 電報を読んだフランツ=カール=ヨーゼフは、密かにほくそ笑んだ。 Novel&Message by 千菊丸さん |