PURE

第四幕
『晩夏』

第1話


作:千菊丸さん
1877年、イギリス・ロンドン。

ローズワース邸では、長女のエリザベスが本を読んでいた。彼女は中国の小説を読んでいた。
それは彼女の父が仕事で香港に立ち寄った際に買ったときに、もらった物だ。
うららかな春の午後、エリザベスは陰鬱な気分だった。というのも、もうすぐ社交界シーズンとなり、令嬢達が彼女の力をあてにして、邸に押し掛けてくるからだ。
エリザベスは生まれつき、人の未来が見えたり、人の心が読めたり、霊が見えたりと、特殊な能力を持っていた。その力のせいで人にあてにされ、利用され、恐れられたりした。なのでエリザベスは19歳になっても舞踏会などの晴れがましい場所を嫌い、邸に閉じ籠もって猫のガストンと毎日過ごしていた。

(雨が降りそうね)
遠くで雷雲が渦巻くのを、エリザベスは感じた。
ほどなくして、大粒の雨が彼女の部屋の窓を叩いた。
「ガストン、お前はいいわね。好きなことを気ままにして・・」
ガストンはエリザベスの膝の上で丸くなって寝ていた。
その時、廊下からけたたましい足音が聞こえた。
「お姉様っ、今夜ブロンズ様のところでパーティーがあるんですって!」
3歳下の妹・レイチェルが頬を上気させながら叫んだ。
「私はいいわ。」
「お姉様、外に出ないと駄目よ。病気になってしまうわ。」
「着ていくドレスがないわ。それに、私人が多い所って、好きじゃないの。」
そう言うとエリザベスは再び本を読み始めた。
「駄目よっ、お姉様!誰もお姉様の力なんか、頼りにしてないわ。」
レイチェルはそう言うと、姉から本を取り上げた。
「だといいんだけど・・」
結局エリザベスはパーティーに行くことを渋々と承知した。
「お嬢様、何かご用ですか?」
使用人のフランソワが部屋に入ってきた。
「今夜パーティーに行くことになったの。」
「そうですか。」
「嫌だわ。」
「大丈夫です、今度は楽しめます。」
エリザベスにとってフランソワは、良い話し相手であった。
フランソワは妹の次に彼女の力を理解してくれる。
「だといいけど。」
エリザベスはそう言って、窓を眺めた。
雨はまだ、降り続いていた。









Novel&Message by 千菊丸さん


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