PURE

第三幕
『嵐』

第16話


作:千菊丸さん
1617年、春。
アンドリューとカトリーヌは、子ども達に囲まれて幸せな日々を送っていた。
略奪愛の末に、カトリーヌはアンドリューの妻となった。
ルーシーはこの村で暮らし始めた頃、恐怖に怯えていた。そのつど、カトリーヌがルーシーを抱き締めた。
今は、アンドリューとカトリーヌの長女・ジョゼフィーヌと仲良くなり、一緒に野山を駆け回っている。
村での生活は、のんびりとしていて、穏やかなものだった。
ロンドンに戻りたいとは思わない。アンドリューも、同じだった。
ただ気になるのは、クレアのことだった。
あれから5年が過ぎた。
クレアはいまだに、自分達のことを恨んでいるのだろうか?
カトリーヌが家畜にえさをやっていると、ふと視線を感じた。後ろの茂みから感じる。
カトリーヌが振り向くと、底意地の悪い笑みを浮かべたクレア立っていた。カトリーヌは凍り付いた。
「久しぶりね。」
カトリーヌは逃げようとしたが、クレアが彼女の腕を掴み、広場まで連れて行った。
「この女は魔女よっ、こいつはあたしの夫をたぶらかしたのよ!」
村人達の視線がいっせいにカトリーヌへと向けられる。
「違うわ。私、魔女なんかじゃ・・」
「嘘おっしゃい!私にあんな仕打ちをしといて、何をとぼけているのよ!」
クレアの叫び声を聞き、アンドリューが家から駆け出してきた。
「クレア、お前っ、どうしてこんなところに!」
「決まっているでしょう?あなたとこの泥棒猫に復讐するためよっ!」
クレアはそう言って村人達に5年前の出来事を話した。
信心深い村人達は、たちまち皆クレアに同情した。
カトリーヌは捕らえられ、魔女審問を受けた。
「汝の罪を認めよ!」
「いいえ、私は何もやっておりません!」
無実を叫ぶと彼女に、容赦なく激しい拷問が彼女の体を打ちのめす。
アンドリューは妻を救おうと村の有力者とかけあったが、誰もアンドリューの言葉に耳を貸す者はいなかった。
やがて魔女裁判が開かれ、カトリーヌは有罪となり、死刑に処されることとなった。
処刑前夜、アンドリューはカトリーヌと会うことを許された。
久しぶりに見たカトリーヌの姿は、アンドリューの目から小さく見えた。
「カトリーヌ、ごめんな、お前を守れなくて。」
「いえ、いいのよ、あなた。」
処刑当日の朝が来た。
カトリーヌは顔をこばわらせながら処刑台へと向かっていった。
村日達は絶えず石を投げてくる。
子ども達は涙を浮かべている。
カトリーヌの胸の位置まで、薪が置かれた。執行人が火をつけようとしたその時ー
「やめよ!」
昔、ロンドンの街で助けてくれた若者がいた。若者が現れると、皆こうべを垂れた。
彼はイングランドの皇太子であった。
皇太子によって、カトリーヌは命を救われた。
代わりに、クレアが火刑に処された。
クレアは身をよじり、苦悶の叫びをあげながら死んだ。
「カトリーヌ。」
「アンドリュー。」
アンドリューとカトリーヌは、互いにしっかりと抱き合った。
その後、アンドリューはカトリーヌと子ども達に見守られながら、1628年11月2日、38歳で生涯を閉じた。
カトリーヌは刺繍で生計を立てながら7人の子どもを育て上げ、1685年12月、90歳で生涯を閉じた。
ナタリーはオクタビアンと円満な夫婦生活を送り、1664年8月、90歳で生涯を閉じた。
ドルヴィエ家はナタリーとオクタビアンの四男・ルミエルが継ぎ、ドルヴィエ家はアジアを拠点とし、貿易によって家が栄え、その栄華は250年以上も続くことになるのである。





−第三幕『嵐』完−
感想は千菊丸さんまで
千菊丸さんのHPはこちら





Novel&Message by 千菊丸さん


第15話へ戻る / 貰いモノは嬉し!へ戻る