|
1617年、春。
アンドリューとカトリーヌは、子ども達に囲まれて幸せな日々を送っていた。 略奪愛の末に、カトリーヌはアンドリューの妻となった。 ルーシーはこの村で暮らし始めた頃、恐怖に怯えていた。そのつど、カトリーヌがルーシーを抱き締めた。 今は、アンドリューとカトリーヌの長女・ジョゼフィーヌと仲良くなり、一緒に野山を駆け回っている。 村での生活は、のんびりとしていて、穏やかなものだった。 ロンドンに戻りたいとは思わない。アンドリューも、同じだった。 ただ気になるのは、クレアのことだった。 あれから5年が過ぎた。 クレアはいまだに、自分達のことを恨んでいるのだろうか? カトリーヌが家畜にえさをやっていると、ふと視線を感じた。後ろの茂みから感じる。 カトリーヌが振り向くと、底意地の悪い笑みを浮かべたクレア立っていた。カトリーヌは凍り付いた。 「久しぶりね。」 カトリーヌは逃げようとしたが、クレアが彼女の腕を掴み、広場まで連れて行った。 「この女は魔女よっ、こいつはあたしの夫をたぶらかしたのよ!」 村人達の視線がいっせいにカトリーヌへと向けられる。 「違うわ。私、魔女なんかじゃ・・」 「嘘おっしゃい!私にあんな仕打ちをしといて、何をとぼけているのよ!」 クレアの叫び声を聞き、アンドリューが家から駆け出してきた。 「クレア、お前っ、どうしてこんなところに!」 「決まっているでしょう?あなたとこの泥棒猫に復讐するためよっ!」 クレアはそう言って村人達に5年前の出来事を話した。 信心深い村人達は、たちまち皆クレアに同情した。 カトリーヌは捕らえられ、魔女審問を受けた。 「汝の罪を認めよ!」 「いいえ、私は何もやっておりません!」 無実を叫ぶと彼女に、容赦なく激しい拷問が彼女の体を打ちのめす。 アンドリューは妻を救おうと村の有力者とかけあったが、誰もアンドリューの言葉に耳を貸す者はいなかった。 やがて魔女裁判が開かれ、カトリーヌは有罪となり、死刑に処されることとなった。 処刑前夜、アンドリューはカトリーヌと会うことを許された。 久しぶりに見たカトリーヌの姿は、アンドリューの目から小さく見えた。 「カトリーヌ、ごめんな、お前を守れなくて。」 「いえ、いいのよ、あなた。」 処刑当日の朝が来た。 カトリーヌは顔をこばわらせながら処刑台へと向かっていった。 村日達は絶えず石を投げてくる。 子ども達は涙を浮かべている。 カトリーヌの胸の位置まで、薪が置かれた。執行人が火をつけようとしたその時ー 「やめよ!」 昔、ロンドンの街で助けてくれた若者がいた。若者が現れると、皆こうべを垂れた。 彼はイングランドの皇太子であった。 皇太子によって、カトリーヌは命を救われた。 代わりに、クレアが火刑に処された。 クレアは身をよじり、苦悶の叫びをあげながら死んだ。 「カトリーヌ。」 「アンドリュー。」 アンドリューとカトリーヌは、互いにしっかりと抱き合った。 その後、アンドリューはカトリーヌと子ども達に見守られながら、1628年11月2日、38歳で生涯を閉じた。 カトリーヌは刺繍で生計を立てながら7人の子どもを育て上げ、1685年12月、90歳で生涯を閉じた。 ナタリーはオクタビアンと円満な夫婦生活を送り、1664年8月、90歳で生涯を閉じた。 ドルヴィエ家はナタリーとオクタビアンの四男・ルミエルが継ぎ、ドルヴィエ家はアジアを拠点とし、貿易によって家が栄え、その栄華は250年以上も続くことになるのである。 Novel&Message by 千菊丸さん |