PURE

第三幕
『嵐』

第15話


作:千菊丸さん
「ナタリー、あの2人に呪いをかけてよ。あの2人を苦しませてやるのよ!絶対幸せになんかさせないんだから!」
そう言ったクレアの目には、憎悪が宿っていた。
ナタリーはため息を付いた。
オクタビアンとの結婚が決まり、ナタリーは「呪いの間」を封鎖し、道具類も全て燃やした。
彼女は黒魔術から足を洗った。
ナタリーは気づいたのだ。
人を呪ってばかりいても、自分には何の得にはならないと。
早くに母を亡くし、最愛の妹も亡くし、父も亡くしたナタリーは、権力にすがりつくしかなかった。
だがオクタビアンと付き合う内に、人に愛されることの喜びを知った。
アンドリューには、好きな人と幸せになってもらいたい。
ナタリーは、クレアの目を見据えていった。
「クレア、私はもう黒魔術から足を洗ったの。それに、アンドリューのことは許したわ。残念だけど、私はあなたの力になれないわ、ごめんなさい。」
自分に協力してくれるだろうと思っていたナタリーから出た言葉に、クレアは耳を疑った。
『私は、あなたの味方よ。』
ナタリーからその言葉を聞いたのは、4日前。
夫の浮気を知って取り乱す自分に、優しく手をさしのべてくれた。
カトリーヌの妊娠を知ったときも、ナタリーは手紙で励ましてくれた。
それなのに、彼女は今、自分を裏切ろうとしている。
「私を、裏切るつもり・・?」
「そんなんじゃないわ、私は気づいたのよ。人を呪っても、何のためにもならないって。」
ナタリーはそう言ってハーブティーを飲んだ。
クレアは憤怒の表情となった。
「なによっ、あなた私の味方だって言ったじゃない!それなのに今になって、アンドリューのことを諦めろって言うの?!」
クレアはそう言ってカップを投げた。カップは派手な音を立てて壁に砕け散った。
「この裏切り者!あんたを信じたあたしが馬鹿だったわ!」
「クレア、落ち着いて・・」
「落ち着いてなんかいられないわっ、あんたの力なんかいらないっ!」
そう言うとクレアはナタリーを突き飛ばし、邸を出た。
(あの2人を、絶対苦しめてやるんだから!)
ロンドンに帰ると、クレアはある妖術使いの元を訪ねた。
「私に、黒魔術を教えてくれない?」
アンドリューとカトリーヌは結婚し、2人の間には三男二女が生まれた。2人はロンドンから遠く離れた田園地方の村で暮らしている。
カトリーヌはルーシーを実子と分け隔てなく育てた。
ナタリーとオクタビアンは、4人の子どもに恵まれた。
あれから5年ー
周囲は幸せであるのに、クレアは1人、荒れ果てた邸で暮らしていた。










Novel&Message by 千菊丸さん


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