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「ナタリー、あの2人に呪いをかけてよ。あの2人を苦しませてやるのよ!絶対幸せになんかさせないんだから!」
そう言ったクレアの目には、憎悪が宿っていた。 ナタリーはため息を付いた。 オクタビアンとの結婚が決まり、ナタリーは「呪いの間」を封鎖し、道具類も全て燃やした。 彼女は黒魔術から足を洗った。 ナタリーは気づいたのだ。 人を呪ってばかりいても、自分には何の得にはならないと。 早くに母を亡くし、最愛の妹も亡くし、父も亡くしたナタリーは、権力にすがりつくしかなかった。 だがオクタビアンと付き合う内に、人に愛されることの喜びを知った。 アンドリューには、好きな人と幸せになってもらいたい。 ナタリーは、クレアの目を見据えていった。 「クレア、私はもう黒魔術から足を洗ったの。それに、アンドリューのことは許したわ。残念だけど、私はあなたの力になれないわ、ごめんなさい。」 自分に協力してくれるだろうと思っていたナタリーから出た言葉に、クレアは耳を疑った。 『私は、あなたの味方よ。』 ナタリーからその言葉を聞いたのは、4日前。 夫の浮気を知って取り乱す自分に、優しく手をさしのべてくれた。 カトリーヌの妊娠を知ったときも、ナタリーは手紙で励ましてくれた。 それなのに、彼女は今、自分を裏切ろうとしている。 「私を、裏切るつもり・・?」 「そんなんじゃないわ、私は気づいたのよ。人を呪っても、何のためにもならないって。」 ナタリーはそう言ってハーブティーを飲んだ。 クレアは憤怒の表情となった。 「なによっ、あなた私の味方だって言ったじゃない!それなのに今になって、アンドリューのことを諦めろって言うの?!」 クレアはそう言ってカップを投げた。カップは派手な音を立てて壁に砕け散った。 「この裏切り者!あんたを信じたあたしが馬鹿だったわ!」 「クレア、落ち着いて・・」 「落ち着いてなんかいられないわっ、あんたの力なんかいらないっ!」 そう言うとクレアはナタリーを突き飛ばし、邸を出た。 (あの2人を、絶対苦しめてやるんだから!) ロンドンに帰ると、クレアはある妖術使いの元を訪ねた。 「私に、黒魔術を教えてくれない?」 アンドリューとカトリーヌは結婚し、2人の間には三男二女が生まれた。2人はロンドンから遠く離れた田園地方の村で暮らしている。 カトリーヌはルーシーを実子と分け隔てなく育てた。 ナタリーとオクタビアンは、4人の子どもに恵まれた。 あれから5年ー 周囲は幸せであるのに、クレアは1人、荒れ果てた邸で暮らしていた。 Novel&Message by 千菊丸さん |