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カトリーヌはいつものように、スーザンの元へバレエのレッスンを受けていた。
だが、カトリーヌの頭の中はアンドリューのことでいっぱいだった。 レッスンが終わり、スーザンは険しい顔をしていた。 「あなた、アンドリュー様のことを考えていたわね?」 「奥様・・」 カトリーヌは、スーザンとまともに目を合わせられなかった。 「どうやら、図星のようね。」 スーザンはそう言って、カトリーヌをレッスン室から居間へと連れて行き、メイドに紅茶を頼んだ。 「アンドリュー様とあなたが恋仲になることは、あのパーティーでわかったわ。」 スーザンはそう言って笑った。 「私も、同じだったから。」 「奥様も、好きな方が?」 「ええ、昔ね。彼は東方の異民族で、美しい金髪ときれいな紅の瞳をしていたわ。」 スーザンはカトリーヌに語り始めた。 エドワードと結婚する前、スーザンは異民族の青年と恋に落ちた。だが彼女には縁談があった。 やがてスーザンは彼の子を妊娠し、人知れず出産した。 「私が最も、激しく恋をした時だったわ。」 そう言ったスーザンの目には、光るものがあった。 「お子さんは?あの後どうしたんですか?」 スーザンは目を伏せた。 「産まれた後、子どもは修道院がやっている孤児院に預けられて、それっきり・・」 「ごめんなさい。」 「いえ、いいのよ。」 そう言うとスーザンはカトリーヌの額を見た。 「生きていたら、ちょうどあなたぐらいの年かしら。」 スーザンはカトリーヌを見つめて言った。 「アンドリュー様との恋を実らせるには、さまざまな障害がありそうね。本当に彼のことを愛しているなら、クレア様の気持ちも1度考えたらどうかしら?」 「クレア様とは政略結婚だから、アンドリュー様は愛していないと言っています。」 アンドリューはクレアのことなど愛していない。ただ世間体を保つためだけの『仮面夫婦』だと。 カトリーヌの言葉に、スーザンの眉尻が上がる。 「さあ、それはどうかしら?クレア様は見たところ、アンドリュー様のことを愛しているんじゃなくて?」 「あんなブスが?嘘でしょう?!」 カトリーヌはそう言って笑ったとき、気分が悪くなった。 「カトリーヌ、あなた・・」 「もしかして・・」 カトリーヌはそっと下腹部に手を触れた。 ナタリーはパリに戻り、水晶玉でスーザンとカトリーヌの会話を聞いていた。 「なんとかしなくてはね・・」 ナタリーは、カトリーヌの額の入れ墨を見た。 「呪われた印が、あの娘にも・・」 Novel&Message by 千菊丸さん |