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クレアは重い足取りで邸を後にした。 「お母様、お腹空いた。」 走り寄ってくるルーシーを無視して、クレアは酒を飲んでいた。 夫が自分のことを嫌っている。 あの鍛冶屋の娘を忘れられないことは知っていた。 自分はアンドリューが見向きもしない女だ。 それでも、彼が欲しかった。 家のためだけでなく、アンドリューに一目惚れしたからだ。 だが、カトリーヌと話しているアンドリューの横顔にクレアは打ちのめされた。 (どうして私じゃないの・・どうして・・) クレアは、ワインを5本、空にした。 「お母様、お腹空いた。」 ルーシーがすり寄ってくる。 「・・うるさい。」 クレアはルーシーの両肩をつかんで強く揺さぶった。 「うるさい、うるさい!」 ルーシーの体を強く叩きながら、クレアは叫んだ。 夫に似ている娘。 憎らしくてたまらなかった。 クレアはルーシーに虐待を続けた。 「あんたがいるから、お父様が他の女とっ!」 ルーシーは泣きわめいた。クレアはますますムカついてルーシーを叩いた。 (この子のせいよ、この子のせいで私は誰からも愛されない!) アンドリューはカトリーヌと過ごす夜が楽しかった。 クレアの時とは感じなかった、心のときめきを感じていた。 それは、アイリーンと付き合っていた頃と同じものだった。 もしかしたら、カトリーヌは運命の相手なのかもしれない。 アンドリューは自分が妻帯していることを悔やんだ。 もしカトリーヌが貴族の娘だったら、良い家族が築けただろうに。 私はつくづく、女運がないな。 アンドリューはため息をついた。 カトリーヌも、アンドリューに対してときめきを感じた。 アンドリューが独身だったらどんなにいいだろう。 パーティーが終わろうとしていた。 「次はいつ会えますか?」 「そうですね・・次の木曜にでも。」 「楽しみにしてます。」 カトリーヌはそう言って顔を赤らめながら去っていった。 邸に帰ると、アンドリューは我が目を疑った。 家中の物が壊され、床にはワインが何本も転がっていた。 クレアが恐ろしい形相でアンドリューを後ろから見ていた。 アンドリューは悪寒が走り、部屋に入った。 「あなた、許さないわよ、浮気なんて・・」 クレアはそう言ってクックッと笑った。 カトリーヌはパン屋の裏口からそっと入った。 ガタンと倉庫から物音がした。 カトリーヌはそっと倉庫を覗いてみた。 Novel&Message by 千菊丸さん |