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アンヌと少年は見つめ合った。背中の傷はまだうずいている。 一体この感覚はなんなのだろうか? 少年と前に出会った感じがある。 かすかに残る前世の記憶が、アンヌと少年を繋いでいるかのように。 突然、少年の背後から声がした。 見ると、鞭を持った男が少年に迫ってくる。少年は怯えている。 アンヌはこの少年が奴隷商人から逃げてきたのだとわかった。 「お騒がせしてすいません、奥様。」 うさん臭い商人は黄色い歯を見せて笑った。 「その子、いくら?」 「ここでは売れませんやぁ。明日の市に来てくださらないことには。」 「そう。」 アンヌが立ち去ると、少年の泣き声と商人の怒鳴り声がした。 アンヌは森での出来事を、マリーに話した。 「その子は多分ローマから連れてこられた子ですわ。その子は孤児でしょうね。 服はどんなものを?」 「そうね、首元はすっきりとしていたものを着ていたわ。それに前開きの服だった。」 「あの子は明国から来たんですわ。噂がありましてね。明国には金髪紅眼の少数民族がいるとかで・・」 「少数民族?」 アンヌは聖書から顔をあげた。 「ええ、200年ほど前に『コウガ』という民族がいたそうです。今は人間による虐殺で絶滅寸前だとか・・その『コウガ』は、相手次第で男でも女でもなれて、ライオンに変身できるそうです。」 「ライオンね・・」 アンヌはあの時、少年の後ろにライオンの幻が見えた。 「奥様とその子が出会ったのは、主のお導きかもしれませんね。」 「主が私とその子を会わせたというの?そうだとしたら、面白いわね。」 アンヌはそう言って、湯舟からあがった。 背中の傷が、まだうずいている。それに、熱を出している。 いままで何も起こらなかったのに、どうしたというの? あの少年と何か関係があるのだろうか? それとも、自分の前世とあの少年に何らかの接点があるというのか? 不安な心を落ち着かせるために、アンヌは床に入った。 その夜、夢を見た。 あの少年が愛らしい笑顔を自分に浮かべる夢。 幸せであった頃の夢。 だが、少年と自分が血を流して倒れていた。 アンヌはそこで目を覚ました。 (一体、この夢は・・) 朝食を食べ終えると、アンヌは市へと向かった。 紅牙族のことが出てきてしまったのに、生まれ変わりではないじゃんというツッコミを自分で入れてしまう・・(苦笑)。 Novel&Message by 千菊丸さん |