PURE

第三幕
『嵐』

第2話


作:千菊丸さん
家に帰ると、クレアが酒に酔った顔でアンドリューを出迎えた。
「また飲んでいるのか。」
「いいじゃない、気晴らしするものが何もないんですもの。」
(気晴らしする方法を見つけないからだろう。)
アンドリューはもう少しでそんな言葉が出そうになったが、我慢して押しとどめた。
「あなた、今夜はバーテミア家でパーティーがあるんですって。私、どのドレス着ていこうかしら。」
「何でもいいだろ。」
「ひどいわ。あなたはわたくしのことなんて、どうでもいいのね。」
クレアの不満げな声を居間に残して、アンドリューは自分の部屋へと向かった。
クレアにはうんざりしている。
没落寸前のオジュボーン家がローズワース家と姻戚関係を結びたいために、3姉妹の中で醜女のクレアを、アンドリューに押して付ける形でクレアと結婚させられたのが5年前。
アンドリューがクレアを抱いたのは、新婚初夜の1度きりだった。
アンドリューはクレアのことを愛していない。
彼には、結婚前につきあっていた恋人がいた。
恋人の名はアイリーン。
豊かな薄茶の髪とコバルトブルーの瞳をした、知的な女性だった。
アンドリューはアイリーンを愛していた。
それはアイリーンも同じだった。
2人は結婚の約束をしていた。
だが、アイリーンは貴族の娘ではなかった。
彼女は鍛冶屋の娘だった。
オジュボーン家との縁談が持ちあがり、アイリーンはアンドリューと駆け落ちしようとした。
だが、アイリーンは火事で焼死した。
噂によると、アイリーンには別の男との縁談があり、気が動転した彼女が家に火をつけたという。
だがアイリーンの死は、クレアが何とかアンドリューの妻になりたいがために、邪魔なアイリーンを殺したのだ。

アンドリューはアイリーンを失い、彼の心はそれ以来、死んだ。
クレアとアンドリューは、互いにすれ違っていた。
2人の間には、ルーシーという1人娘だけ。
ルーシー。
父親譲りの黒髪と、つぶらな瞳。
アンドリューはルーシーを溺愛した。
クレアはルーシーを産んだだけで、育児は一切放棄し、アンドリューがルーシーを育てた。
部屋に入り、礼服に着替えた。
「ちょっと痛いじゃないっ、もうちょっと優しくしてよ!」
隣では、クレアがコルセットを締め上げる小間使いを叩き、怒鳴っている。
アンドリューはため息を付きながら階下に降り、馬車に乗った。
「あなた、待ってぇ〜!」
「出せ。」
妻の声を無視して、アンドリューを乗せた馬車はローズワース邸を出た。





続く
感想は千菊丸さんまで
千菊丸さんのHPはこちら




アンドリューは政略結婚でクレアと結ばれました。
そこには愛がありません。
彼には結婚前に付き合っていた彼女・アイリーンがいて、彼女の死から立ち直れないでいる。
その彼女の死には、クレアが裏で糸をひいているとは知らずに・・。

Novel&Message by 千菊丸さん


第1話へ戻る / 貰いモノは嬉し!へ戻る