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そこには、懐かしい流麗な母の字が並んでいた。
手紙は全部6枚あった。 『親愛なる私の天使・ガブリエルへ, お前がこの世に生を受けてから2時間も経とうとしている。 これからお前はどんな子に育つのかしら。 どんな出来事が、お前を待っているのかしら。 そして−お前が『真実』を知ったとき、私は生きているのかしら。 お前がこれを読んでいる時、私は亡き者となっているでしょう。お前の髪や瞳の色を、悪魔の忌み子として恐れ、またお前の美しさに嫉妬する余り、殺意を抱く者も表れるでしょう。 けれどもお前は1人ではないの。 私が1人ではなかったように。 おまえを心から愛し、慈しんでくれる人がきっといるはず。 おまえは私の心の闇を照らしてくれた、一筋の光だった。 私の希望の子。 誰よりも愛しい人との間に生まれた愛の結晶。 それがおまえなのよ、ガブリエル。 私はおまえをいつでも見守ってるわ。 たとえ肉体が滅び、命が尽きようとも。 私はずっとあなたの側にいると、約束するわ。 1534年11月28日, 我らの希望の子、ガブリエルへ アンヌ=カトリーヌ=オイゲーニュ=テレーズ=ドルヴィエ』 ガブリエルは母の手紙を読み終わって、涙が止まらなかった。 自分が男だと知ったとき、心から絶望し、心底母を恨んだ。 何故自分を生んだのかと。 だが今は、母への恨みは消えた。 「お母様、私を生んでくれてありがとう・・」 ガブリエルは涙を流した。 「ガブリエル様っ、すぐにお逃げください!ソフィア様があなた様を魔女として告発なさいました!」 マリーの声を聞き、ガブリエルは我に返った。 今すぐ逃げなければ! 「ガブリエル、こっちだ!」 部屋を出ると、ルシフェルが手招きしていた。 ガブリエルはルシフェルと共に館の裏口から逃げた。 それから2人は街から街へと逃げていった。 そして、ある村の領主として、小さな館に住んでいた。 身分を捨てたガブリエルとガブリエルとルシフェルの暮らしは、とても静かなものだった。 「このまま、2人で生きてゆけたらいいのに・・」 「ええ、ずっと2人で・・」 だがソフィアの追及の手は厳しく、とうとうこの村にまで兵士がやってきた。 兵士達は館を取り囲んだ。 「もう、逃げられないわ。」 「そうだね。」 その時、2人は覚悟を決めた。 館に火が放たれた。 炎はあっという間に館を包み込んだ。 ルシフェルとガブリエルは、向かい合わせにテーブルに座っていた。 「ガブリエル、後悔していないかい?」 「いいえ。」 「そう・・」 2人は同時にグラスのワインを飲み干した。 一拍置いて、2人は血を吐いた。 ガブリエルとルシフェルは互いの手を握り合い、折り重なるように死んでいった。 その直後、館は焼け落ちた。 ガブリエル=アンヌ=フランソワ=カトリーヌ=オイゲーニュ=ドルヴィエ、ルシフェル=ロシュフェル=カルディナリ=アントーニオ=トルッディー=サルディッナーレ、マルセイユ近郊の村・リリアン=シャンテ村にて死す。 2人の死後、ガブリエルの弟ニコル=フランソワ=シャルル=カリン=ダニエル=ドルヴィエが家督を継ぎ、ドルヴィエ家は20世紀初頭までその名を轟かすこととなる。 ソフィア=バルテミーは尼僧となり、1591年6月10日、スペイン・リベリアの修道院で没する。 ニコルはカトリーヌ=ローズワースと結婚し、ドルヴィエ家の名はヨーロッパのみならず、アジアまでその名を広げるのであった。 第二幕、終了しました。 第三幕では、17世紀のイギリスを舞台にします。 身分違いの恋です。 第三幕ではハッピーエンドな結末になってます。 Novel&Message by 千菊丸さん |