PURE

第二幕
『波乱』

第18話


作:千菊丸さん
そこには、懐かしい流麗な母の字が並んでいた。
手紙は全部6枚あった。

『親愛なる私の天使・ガブリエルへ,
お前がこの世に生を受けてから2時間も経とうとしている。
これからお前はどんな子に育つのかしら。
どんな出来事が、お前を待っているのかしら。
そして−お前が『真実』を知ったとき、私は生きているのかしら。
お前がこれを読んでいる時、私は亡き者となっているでしょう。お前の髪や瞳の色を、悪魔の忌み子として恐れ、またお前の美しさに嫉妬する余り、殺意を抱く者も表れるでしょう。
けれどもお前は1人ではないの。
私が1人ではなかったように。
おまえを心から愛し、慈しんでくれる人がきっといるはず。
おまえは私の心の闇を照らしてくれた、一筋の光だった。
私の希望の子。
誰よりも愛しい人との間に生まれた愛の結晶。
それがおまえなのよ、ガブリエル。
私はおまえをいつでも見守ってるわ。
たとえ肉体が滅び、命が尽きようとも。
私はずっとあなたの側にいると、約束するわ。
                        1534年11月28日,
                        我らの希望の子、ガブリエルへ
                        アンヌ=カトリーヌ=オイゲーニュ=テレーズ=ドルヴィエ』

ガブリエルは母の手紙を読み終わって、涙が止まらなかった。
自分が男だと知ったとき、心から絶望し、心底母を恨んだ。
何故自分を生んだのかと。
だが今は、母への恨みは消えた。
「お母様、私を生んでくれてありがとう・・」
ガブリエルは涙を流した。
「ガブリエル様っ、すぐにお逃げください!ソフィア様があなた様を魔女として告発なさいました!」
マリーの声を聞き、ガブリエルは我に返った。
今すぐ逃げなければ!
「ガブリエル、こっちだ!」
部屋を出ると、ルシフェルが手招きしていた。
ガブリエルはルシフェルと共に館の裏口から逃げた。
それから2人は街から街へと逃げていった。
そして、ある村の領主として、小さな館に住んでいた。
身分を捨てたガブリエルとガブリエルとルシフェルの暮らしは、とても静かなものだった。
「このまま、2人で生きてゆけたらいいのに・・」
「ええ、ずっと2人で・・」
だがソフィアの追及の手は厳しく、とうとうこの村にまで兵士がやってきた。
兵士達は館を取り囲んだ。
「もう、逃げられないわ。」
「そうだね。」
その時、2人は覚悟を決めた。
館に火が放たれた。

炎はあっという間に館を包み込んだ。
ルシフェルとガブリエルは、向かい合わせにテーブルに座っていた。
「ガブリエル、後悔していないかい?」
「いいえ。」
「そう・・」
2人は同時にグラスのワインを飲み干した。
一拍置いて、2人は血を吐いた。
ガブリエルとルシフェルは互いの手を握り合い、折り重なるように死んでいった。
その直後、館は焼け落ちた。

ガブリエル=アンヌ=フランソワ=カトリーヌ=オイゲーニュ=ドルヴィエ、ルシフェル=ロシュフェル=カルディナリ=アントーニオ=トルッディー=サルディッナーレ、マルセイユ近郊の村・リリアン=シャンテ村にて死す。

2人の死後、ガブリエルの弟ニコル=フランソワ=シャルル=カリン=ダニエル=ドルヴィエが家督を継ぎ、ドルヴィエ家は20世紀初頭までその名を轟かすこととなる。

ソフィア=バルテミーは尼僧となり、1591年6月10日、スペイン・リベリアの修道院で没する。
ニコルはカトリーヌ=ローズワースと結婚し、ドルヴィエ家の名はヨーロッパのみならず、アジアまでその名を広げるのであった。





−第二幕『波乱』完−
感想は千菊丸さんまで
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第二幕、終了しました。
第三幕では、17世紀のイギリスを舞台にします。
身分違いの恋です。
第三幕ではハッピーエンドな結末になってます。

Novel&Message by 千菊丸さん


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