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「全くなんなんだ、あいつ。」 2人は邸に戻り、ルシフェルはルイの態度に怒っていた。 「ガブリエルだけに挨拶して・・無礼にも程がある。」 ルシフェルは没落貴族のルイが、自分を無視したことが許せないようだった。 「そんなに目くじら立てなくていいじゃない。」 ガブリエルはそう言って結った髪を解いた。 金色の髪が床にふわりと広がる。と同時に、彼女がいつもつけている香水が部屋に広がる。 ルシフェルはガブリエルの髪が好きだった。 闇のような自分の漆黒の髪とは違って、太陽のような美しい髪。 絹糸のようにさらさらとした感触。ガブリエルの髪は、ルシフェルが世界で一番好きなものだ。 「お姉様、さっきリューイに会ったよ。とても怒ってる。」 ガブリエルの弟・ニコルが部屋に入ってきた。 ニコルは母親似の切れ長の瞳で、髪は漆黒。スラリとした長身で、女の子によくモテる。 「きっと僕たちのこと、見てたんだ。ガブリエルを諦めたらいいのに。」 ルシフェルはそう言ってため息をついた。 「リューイ、お姉様にベタ惚れだもん。お姉様を嫁にするって、言ってた。」 ニコルはそう言うと、手紙を姉に渡した。 「リューイからだよ。」 ガブリエルは手紙を開いた。 そこには− 『ガブリエル、お前を嫁にするまで絶っ対に諦めねぇ!』 紙がはみ出すほどの字で、リューイはデカデカと書いていた。 「ぷっ」 ガブリエルは噴き出した。 「バカだね、リューイ。」 「ぶえっくしょんっ!」 「リューイ、どうした?風邪でもひいたのか?」 「いや・・」 (あのネクラ野郎、覚えておけっ!) 髪を梳き終わり、ガブリエルは亡き母の部屋に行った。そこは誰も使っていない。 本棚や家具の位置も、そのままだ。 母が新だ時のまま。 ガブリエルは母のベッドに触った。埃がたまっている。 (お母様・・) 父が姿を消した今、母が恋しい。 『いつまでも私を忘れないで。』 死に間際に言った母の一言。 「忘れるわけ、ないじゃない・・」 ガブリエルはそう言って、ベッドに倒れ込んだ。 「どうして、私を置いて逝ってしまったの?私、お母様と話をしたかったわ。いっぱい色んな事を・・・」 そう言うとガブリエルは涙を流した。 ルビーの耳飾りが揺れる。 その時、一陣の風が吹いた。 『ガブリエル・・』 ガブリエルは目を見開いた。 彼女の目の前には、亡くなった母が立っていた。 アンヌが、ガブリエルの前に。 『黄泉がえり』をモデルにしました。 アンヌは、幼い娘を残して逝ったことが心残りだったんでしょうね。 次回ルシフェルとガブリエルの関係に、急展開が。 Novel&Message by 千菊丸さん |