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どこかで声がする。 『・・・月』 懐かしい声。 『火月・・』 ぼやけていた輪郭が、次第に明らかになる。 (アンヌ様?!) 自分を呼んでいる男は、アンヌそっくりだった。 男の姿は、アンヌに変わる。 『カリン。』 自分の手を優しく握るアンヌ。 『お前、私の怨みを晴らそうとしてるの?』 (だって、アンヌ様はあの人に・・) 『私は知っていたわ、何もかも。もういいのよ、カリン。もういいの・・』 アンヌはそう言って微笑んだ。 (でも、あいつがアンヌ様をひどい目に・・) 『憎しみで心を闇にしないで。私は幸せだったのよ。それだけは覚えておいて。』 そう言うと、アンヌはフッと姿を消した。 「アンヌ様!」 正気に戻ったカリンは、目の前の光景を見て愕然とした。 そこには、左腕が焼け爛れ、痛みに呻くモンテリオの姿があった。そして粉々に砕けた本棚や、焼け落ちたカーテンが部屋にあった。 「お前、何者なの?」 ソフィアが恐怖に凍りついた顔で言った。 「ぼ、僕は・・」 そう言ってソフィアに近づこうとすると、ソフィアはカリンの顔を燭台のそこで殴った。 「寄らないで、化け物!」 カリンは部屋から追い出された。自分の部屋に戻り、鏡を見ると、そこには全く違う自分がいた。 長く伸びた金の髪。鋭い爪。 (これは僕・・?) カリンは鏡の前で崩れ落ちた。 ガブリエルは父の姿を探していた。 その時、廊下でモンテリオと会った。 モンテリオは、ガブリエルの額を見た。 「化け物・・お前らは化け物だ!」 モンテリオはそう言ってガブリエルを殴った。ガブリエルはひたすら耐えていた。 「忌み子よ!お前は地獄から来た化け物よ!」 ソフィアはそう言うと、ガブリエルをモンテリオとかわりがわりに殴った。 ガブリエルは泣きながら父の部屋に行った。 全身アザだらけのガブリエルを見て、カリンは娘を力いっぱいに抱きしめた。 「お父様、私は化け物なの?私は・・」 「ガブリエル、ごめんな・・お父さんのせいで、ごめんな・・」 カリンは娘を抱きながら、嗚咽した。 自分達は、得体の知れない化け物だ。 自分でもわからないほど、内に魔物が潜んでいる。 一体、自分達は何者なのか? カリン達は知らなかった。 前世からの、逃れられない宿命(さだめ)にあることを。 カリン、変幻してしまった。 前世からの忌まわしい呪いが、現世へと・・。 次回は10年後に移ります。 Novel&Message by 千菊丸さん |