|
モンテリオは、妻に扇子で打たれた頬の傷をさすった。
と同時に、妻に対する激しい怒りがわきあがってきた。 モンテリオは鏡を割った。 アンヌは着実に権力を掌握しつつある。 それに比べてモンテリオは農民の納税を記録するという閑職についている。 ローマ名門の公爵家に生まれ、常に栄光の表舞台にいた自分が、宮廷の隅に追いやられたときの 屈辱。 彼はアンヌを妬んだ。 同じ貴族でありながら、この差はなんなのか。 私が女より劣っているというのか? モンテリオは妻に拒絶されたことよりも、妻が活躍して自分より高い地位にいることの方が腹立だしかった。 自分の無能さを見せつけられたかのようで、モンテリオはアンヌの聡明さを妬んでいた。 幼い頃からラテン語を話し、聖書を暗唱し、スペイン語も話せる彼女が。 そして、馬を巧みに操ることができる彼女が。 自分ができないことをできるアンヌが妬ましく、憎たらしい。 アンヌのせいで、自分には当主の威厳もない。 あの女がいるから私は惨めになる。 そう、あいつがいる限り私は日陰の身。 あいつさえ、いなければ・・。 モンテリオの中に、妻への激しい憎しみが生まれた。 「全く、あの人にはうんざりするわ。」 アンヌは湯舟につかりながら、マリーに愚痴った。 「モンテリオ様はおさびしいのですよ。お嬢様はあの方をお支えにならないと。」 「支える?私があの人を?」 アンヌはそう言うと、大声で笑った。 「あの人を慰め、支える女は、ソフィアで充分じゃなくて?あの人には八方美人な彼女がお似合いよ。」 髪を拭くと、背中が少し見えた。 「お嬢様、それは・・」 アンヌの背中には、槍傷がある。 「これ、生まれた時からあるのよ。不思議だわ。もしかして私の前世は兵士だったのかしらね。」 「そういえば、ルシフェル様も同じところに傷が。」 アンヌはそれを聞くと、夜着をはおった。 「ねぇマリー、私は男に生まれたかったわ。男なら大臣にもなれるし、ドルヴィエ家も継げる・・・」 「女に生まれたのは仕方ありませんわ、お嬢様。それは主がお決めになられたことですもの。」 マリーに髪を梳いてもらいながら。アンヌは何故自分が女に生まれてきたのかと悔しがっていた。 「傷といえば、、モンテリオ様の額に傷がありますよ。お嬢様と同じようものが。」 「傷・・ね・・」 アンヌとルシフェル、そしてモンテリオ。 この3人に生まれつきある傷が、のちに運命の印となるとは、この時、誰が思ったであろうか。 3人の傷−それは前世から彼らを繋ぐ証であることを。 モンテリオ、黒いです。 ちなみに彼は文観の生まれ変わりです。 アンヌには背中に槍傷があります。 これはコミックス7巻で有匡が自害した時にできた槍傷です。 それがそのまま来世では残り、生まれ変わったという設定にしています。 アンヌは有匡の生まれ変わりです。 もし有匡が女性だったら聡明で計算高い悪女になってただろうなぁと思いました。 最新刊のドSな彼を見て、そう思って有匡を女に生まれ変わらせてました。 Novel&Message by 千菊丸さん |