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アンヌの葬儀が厳かに行われた。 フランス宮廷を仕切っていた才女の突然の死を、みな嘆き悲しんだ。 カリンは葬儀に密かに参列した。 ガブリエルは突然の母の死を信じられず、母の棺にとりすがって泣いた。 「お母様、私をおいていかないで!」 棺に土がかけられると、ガブリエルは棺に走り寄り、穴に身を投げた。 「ガブリエル様っ、いけません!」 マリーがガブリエルを抱き上げる。ガブリエルは手足をバタつかせて暴れた。 「離してよ!お母様と死にたいのぉー!」 ガブリエルは母が埋葬されるのを見て涙ぐんだ。カリンはガブリエルとニコルを抱きしめた。 モンテリオは、冷めた目でその光景を見ていた。 むしろ彼は、妻の死を喜んでいた。 ローマの母から渡された毒は、効いたようだ。 (あの女がいなくなった今、私はドルヴィエ家の財産を手に入れることができる。) 聡明であった妻は、もういない。 「お姉様がいなくなられたから、この家はあなたのものですわね。」 「ああ、やっと私のものにできた。あとは・・」 モンテリオはカリン達を見た。 「邪魔者を始末するだけだ。」 ガブリエルは父の胸で泣いていた。 優しく、いつも愛してくれた父とは違い、母は厳しかったが、母は母なりに自分を愛してくれた。 自分に多くの知恵を授けてくれた母は、もういない。 冷たい土の中に埋葬されてしまった。 ガブリエルは、母の葬儀が終わっても泣き続けた。 母の墓石にすがりつきながら。 カリンは母の死を悲しむガブリエルを見て、胸が痛んだ。 それと同時に、彼も深い悲しみに沈んだ。 いつも独りだった自分を愛してくれたアンヌ。 そして自分の子を産んで育ててくれたアンヌ。 『お前と私は、運命で繋がっていたのよ。』 カリンがもしアンヌと会わなかったなら、彼の人生は違うものになっていただろう。 ガブリエルはまだ母の墓にすがりついていた。 カリンは、ガブリエルが産まれた朝のことを思い出した。 赤ん坊が男の子だとわかったとき、アンヌはこう言った。 『この子を女の子として育てるわ。カリン、もし私がいなくなったら、この子をお願い。』 あの時のガブリエルの重みが、今も腕に残っている。 男の子だが、女の子として育てられたガブリエル。 やがて恋に落ち、誰かを好きになるかもしれない。 その時、ガブリエルが相手の子どもを産みたいと言ったら? お前には無理だと言って、真実を話せるのだろうか。 できないだろう。 (アンヌ様、僕はどうすれば・・) ガブリエルの『秘密』の重さに気づいたカリンは、1人頭を抱えた。 ガブリエルを守れるのは、自分しかいないのに。 PURE、新章スタート。 『波乱』。 アンヌとカリンの息子・ガブリエル、モンテリオとソフィアの息子・ルシフェルとの愛の物語。 女として育てられたガブリエル。 自分を慕うガブリエルを想い始めるルシフェル。 2人の想いは徐々に近づく。 だが、2人の周囲には陰謀と、愛憎の嵐が待ち受けようとしていた。 Novel&Message by 千菊丸さん |