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アンヌはベッドに苦しそうに横たわってた。 「どこか具合でも・・」 「ええ、でも大したことはないわ。」 アンヌはベッドから起きあがり、暖炉の前にある椅子に座った。カリンも彼女の隣に座った。 「ガブリエルのことなんですが、あの子に厳しすぎるんじゃありませんか?」 カリンがそう言うと、アンヌはジロリと彼をにらんだ。 「私はあの子が嫌いで厳しくしてるんじゃないのよ。」 そう言ったアンヌの額には、脂汗が心なしか浮かんでいるかのように見える。 「私とお前が死んで、あの子達はどう生きてゆくの?ガブリエルに厳しくしているのは、あの子が世間の荒波に耐えられるようにするため。私はガブリエルを愛しているから、厳しくしているのよ。」 苦しそうに息を吐きながら、アンヌは言った。 「大丈夫ですか。少し休んで・・」 カリンは胸を押さえて苦しげにしているアンヌの手を握った。 「ガブリエルには・・辛い思いを・・させたわ・・女と偽って・・育てて・・なんで・・あの時、私は・・」 そう言ってアンヌは崩れ落ちた。 「アンヌ様?!しっかりしてください!」 アンヌはほどなくして、病に倒れた。原因不明なため、手の施しようがない。アンヌの病状が悪化していき、ウサギ狩りはおろか、日記を書くことができなくなっていた。 「カリン、ごめんね・・お前を1人にしてしまう・・」 「アンヌ様・・」 カリンは、アンヌにすがりつきながら泣いた。 紅玉のピアスがアンヌの髪に触れた。 「お前と私は、運命で繋がっていたのよ。前世で私達は結ばれていたのね・・でも、私達はそうならないみたい・・」 そう言ってアンヌは激しく咳き込んだ。 「アンヌ様・・アンヌ様・・」 「ガブリエルを呼んできて。」 ガブリエルは病床の母を見て涙ぐんだ。 「お母様、しっかりして!私が悪い子だから?」 「いいえ、そうじゃないの。ごめんね、ガブリエル。いままで厳しくして・・お前を可愛がってやりたかった・・不器用な母を許して・・」 「お母様、私お母様の娘に生まれたことが嬉しいわ。だってお父様と愛し合ったから、私が生まれたのよね?」 ガブリエルの言葉に、アンヌは微笑んだ。 「お前を愛しているわ、ガブリエル。ごめんね、ごめんね・・」 アンヌはガブリエルの頬を撫でた 。 「ガブリエル、私の可愛い娘・・お前はこれから、過酷な運命が待っていることでしょう・・でもお前は大丈夫。私の娘だもの。いつまでも私を忘れないで。私はお前に何ひとつ、母親らしいことをしてやれなかった。もっとお前を抱きしめてやりたかった・・ガブリエル、ガブリエル・・」 「お母様、お母様!」 「ガ・・ブ・・リ・・エ・・ル・・愛し・・て・・る・・わ・・」 アンヌはそう言ってガブリエルとカリンに微笑むと、息絶えた。 「お母様ぁ−!」 1541年7月28日。 フランス宮廷が恐れた『氷の悪女』こと、 アンヌ=カトリーナ=オイゲーニュ=テレーズ=ドルヴィエ、死去。 36歳の、若さだった−。 第一幕『再会』、終了。 第二幕はガブリエルと、モンテリオと愛人・ソフィアの子・ルシフェルとの、男同士のドロドロの愛憎劇。 その前に1本番外編と、座談会を入れる予定です。 Novel&Message by 千菊丸さん |