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「・・ヌ様、アンヌ様!」 誰かの呼ぶ声がして、アンヌは目を開けた。 アンヌは王宮にある長椅子に寝かされていた。 「気がつかれたんですね、よかった!」 カリンがアンヌの手が握って、涙ぐんでいた。 「私は・・一体・・」 「急に倒られたんですのよ。」 ソフィアがわざとらしく大げさな様子で扇子をあおいだ。 「でもおめでたい事ですから、よろしいのではなくて?」 「めでたい事?」 ソフィアの取り巻きの1人が言った。 「さっきお医者様がいらしてね。妊娠3ヶ月ですって。」 『妊娠』という二文字が、アンヌにはピンとこなかった。 「誰が?」 アンヌの言葉に、みな爆笑した。 「アンヌ様に決まってるじゃぁありませんか!」 「おめでとう、お姉様。」 周囲の祝福の声に、アンヌは自分が妊娠していることが段々とわかってきた。 「これでローマのお義母様も安心ですわね。」 「ドルヴィエ家にもようやく跡継ぎが・・」 「いやいやめでたい、めでたい。」 自分が妊娠していることよりも、周囲はドルヴィエ家の安泰や跡継ぎのことを話している。 アンヌの心の中で、再び黒い感情がわき上がってきた。 「・・いらない。」 アンヌの声に、周囲は静まった。 「そんなの、いらない。」 アンヌは長椅子から降りて、歩き出した。 「アンヌ様、急に動いては・・」 「構わないわ。」 カリンはアンヌの後を慌てて追った。 「一体どうなさったんですか、急に?」 「どうでもいいでしょ。放っておいて!」 アンヌは自分を引き留めようとするカリンの手を払った。 王宮を出ると、馬車がないことがわかった。 「馬車はどうしたの?」 「帰してしまいました。」 アンヌは舌打ちをした。アンドレの姿を見えた。 「アンドレ、馬を貸してくださらないこと?」 アンヌに声をかけられたアンドレは赤くなって、どもった。 「も、も、もちろんですっ!」 「じゃ、そういうところだから。」 アンヌは白馬にまたがって王宮を去っていった。 「アンヌ様、お待ちを!」 カリンを無視して、アンヌは走るスピードをあげていった。 もうすぐ邸に着く。アンヌはまたスピードをあげた。 その時、1台の馬車がアンヌの前に現れた。 アンヌは馬車をとっさによけたが、彼女は馬から振り落とされた。 「う゛っ」 下腹部に激痛が走った。遠くで人の声がした。 「アッ、アン様っ!」 「お嬢様、しっかりなさって!」 アンヌの意識は、闇に堕ちた。 アンヌがカリンちゃんの子を妊娠。 周囲から跡継ぎを期待され、子どもをいらないと言ってしまうアンヌ。 流産しそうになりますが、どうなるのでしょうか? Novel&Message by 千菊丸さん |