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新年を迎え、アンヌは宮廷の新年を祝う舞踏会や、貴族のパーティーなどに引っ張りだこで、大忙しだった。アンヌは休む暇もなく、邸が帰る頃には日にちが変わっていた。 だがどんなに忙しくても、アンヌはカリンとの時間を大切にした。カリンといると、新年の忙しさもぶっとぶのだった。 アンヌとカリンは、互いに愛し合う仲であった。 あの森での出逢いから1ヶ月足らず、2人の間には、誰もその隙間に入ることのできない絆ができていた。 アンヌはカリンの部屋を訪れた。 そこには、ルイーゼがいた。 「ルイーゼ、こんなところで何をしているの?」 「奥様、私ソフィア様のところで働きますわ。」 「そう、好きになさい。」 ルイーゼはアンヌと目を合わせず、部屋を出ていった。 「どうして、ルイーゼがお前のところに?」 「僕、告白されたんです。」 そう言ってカリンは気まずそうにアンヌを見た。 「それで?」 「断ったんです。僕はアンヌ様のことしか考えられないからって・・」 「バカ正直ねぇ、お前。」 アンヌはそう言って、扇子で口元を隠して笑った。 「バ、バカってなんですか、バカって!」 カリンはそう言って顔をふくらませた。 アンヌは腹を抱えて笑っていた。 「いいこと、女が相手に告白するってことは、一大事なのよ。それをあっさり振るだなんて・・お前、恨まれるわね。」 カリンはアンヌの言葉にバツの悪そうな顔をした。 ルイーゼは、ソフィアの胸で泣いていた。 「まぁ、カリンにふられたの。私の胸でお泣きなさい。」 「ソフィアさまぁぁ!」 「あの女が憎い?」 「ええ、憎いです。」 「そう、それじゃあ私のお願い、聞いてくれる?」 ソフィアは、ほくそ笑みながら言った。 アンヌとカリンは身体を重ねていた。 「奥様、愛してます。」 「私もよ、カリン・・」 2人が幸せの絶頂にいた時、ドアが突然開き、ソフィアがほくそ笑みながら入ってきた。 「まぁ、お盛んね。アンヌ様、お邪魔したかしら?」 アンヌは夜着を羽織り、ソフィアをにらんだ。 「何のご用、ソフィア?」 「あら、私はただ姉の顔を見に来ただけですわ。」 「なんですって?」 アンヌの目が驚きで見開かれた。 ソフィアはしてやったりというような顔で微笑んだ。そして、アンヌの背中の槍傷を見た。 ソフィアはドレスの袖をまくった。 「私にもあるのよ。」 ソフィアの腕には、奇妙な文様のイレズミがあった。 「私とあなたが姉妹ですって?冗談はやめて。」 「冗談じゃないわ。」 ソフィアはアンヌの周りを歩き始めた。 「あなたのお父様、私のお父様でもあるけれどーが亡くなって直後に、私が生まれた。 私の母は山賊の家系の出身。今まで辛く当たられたわ。 モンテリオ様に出会った日の夜、母から聞かされたのよー自分の出生の秘密と、姉の存在を。 20年間生き別れていた姉が、こんなに近くにいるなんて・・」 ソフィアは感涙にむせびながら、アンヌを抱きしめた。 「触らないでっ!」 アンヌはソフィアの腕をふりほどき、彼女の頬を叩いた。 ソフィアは床に転がり、ルイーゼは悲鳴をあげた。 「お姉様・・」 ソフィアは部屋を出た。ルイーゼも慌てて後を追う。 アンヌは自分に実の妹がいたこと、そしてそれが夫の愛人であることという、衝撃の事実を知り、ベッドに崩れ落ちた。 「嘘よ、あんなの嘘に決まってる!」 「アンヌ様・・」 取り乱すアンヌを落ち着かせようと、カリンは彼女の背中を優しく撫でた。 アンヌは、扇子で顔をあおいだ。どうやら、落ち着きを取り戻したらしい。 「カリン、認めないわ。」 「え?」 「あの女が、私の妹だなんて認めない。私が、あんな卑しい家の血をひいていることなんて、絶対に認めなくてよ!」 アンヌはそう言うと、扇子をバシリと閉めた。 「認めないわ、絶対に・・」 窓の外を見つめるアンヌの表情は、実の妹の存在を否定するという、強い意志が見られた。 ソフィアがアンヌの実の妹だった。 神官が有匡さんの実の妹で、兄妹であることと同じように、生まれ変わっても今度は実の姉妹である。お約束ですかね。 アンヌはいままで卑しい者と軽蔑していたソフィアが妹と知り、自分が山賊という卑しい家の血をひいていることに対して拒絶します。 さんざん自分を苦しめてきた愛人が実の妹・・ドロドロ愛憎劇は白熱する一方です。 Novel&Message by 千菊丸さん |