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ルイーゼは拳を震わせながら、アンヌの部屋を後にした。 ルイーゼはカリンのことを好きだった。カリンがこの家に来てから、ずっと。 声をかけることは恥ずかしくて、遠くから見ることだけで精一杯だった。 でも、いつかは告白しようと決めていた。 だが、カリンがいつもアンヌのことを話す度に、ルイーゼの心は乱れた。 「奥様、なんだか僕を子ども扱いするんだ。」 「奥様がね、髪を梳いてくれってきかないんだ。」 (どうして平気な顔であたしの前で奥様の話をするの?あたしの気持ち、知ってるくせに。) アンヌがライバルじゃ、かなわない。 頭がよくて、美人で、貴族で。 自分にはないものを、持っていて。 ルイーゼはアンヌにかすかな憎しみを持っていた。 廊下を曲がろうとすると、ルイーゼはソフィアとぶつかった。 「きゃぁっ!」 「すいません、大丈夫でしたか?」 「ええ。」 ソフィアはそう言ってドレスの裾を払った。 「あなた、アンヌの侍女ね。私の部屋にいらっしゃい。」 ソフィアに言われるがまま、ルイーゼは彼女の部屋に入った。 アンヌの部屋よりやや見劣りするが、内装が豪華なのは変わらなかった。 「ここへおかけなさい。」 ソフィアは扇子でウサギの毛皮が敷いてある椅子をさした。 ルイーゼは落ち着かなさげに椅子に座った。 「お前、私の元で働かないこと?」 「えっ」 ルイーゼはソフィアの言葉に目を丸くした。 「アンヌのところで働くのは、もう嫌なんでしょう?気難しい主人は文句ばかり。それにお前の想い人も奪ってしまうし。」 「ど、どうしてそのことを・・」 「あなたがあのカリンていう子を見る目つきでわかったのよ。」 そう言うとソフィアはルイーゼに微笑んだ。 「私なら、あなたの役に立てるわ。お給料はこっちの方がいいし。それにー」 ソフィアにルイーゼの髪を触った。 「あの女を憎んでいるのは、1人だけじゃないと分かったしね。」 ルイーゼの手に金貨が入った袋を握らせながら、ソフィアが言った。 「よろしくお願い致します。」 ルイーゼはこうして、ソフィア付きの侍女となった。 「あなたに、秘密を教えてあげるわ。」 ソフィアはそう言って、ルイーゼの耳元で何かをささやいた。 アンヌは自分の腕の中で眠るカリンを見て、微笑んだ。 カリンの左耳の紅玉が、闇の中で光る。 その紅玉は、どこかで見たことがあるような気がした。 (私達は、どこかで繋がっているのかもしれないわね。) カリンの額に口づけをし、アンヌは眠りに就いた。 時は、ゆっくりと流れた。 アンヌに対して黒い嫉妬にさいなまれているルイーゼに対して、ソフィアが策を巡らす。 アンヌまさに四面楚歌。 でも聡い女ですから、愛人や夫が企んでいることはわかるかも。 カリンとの運命の繋がりを感じるアンヌ。 Novel&Message by 千菊丸さん |