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アンヌとカリンが愛し合っている頃、侍女部屋ではコリーヌとタルミーナ達が、おしゃべりに花を咲かせていた。
「ねぇねぇ、最近アンヌ様変わられたんじゃない?」 「そうよねぇ、カリンちゃんがここにやって来たから、柔らかくなったていうかあ・・前はツンツンしてたけど。」 コリーヌは宴で残った菓子を食べながら言った。 「きっと愛の力じゃないかしら。奥様、カリンちゃんのこと愛してるのよ。」 リリアンが瞳をキラキラさせながら言った。 「えーっ、あの奥様が?!」 「信じられないっ?!」 「絶対そうよ。だって今2人は同じベッドにいるんですものぉ。」 「ってことは、つまり・・」 「きゃ〜!」 あらぬ妄想をして盛り上がる侍女達。その中でルイーゼはふれくされた顔をしていた。 「奥様は、旦那様という人がありながら、不潔ですわ。」 ルイーゼはそう言って、リンゴをかじった。 「奥様と旦那様とは政略結婚よ。それに旦那様には愛人と隠し子もいらっしゃるし、今更奥様が旦那様に気兼ねするほどでもないと思うけど。」 「そうよ、それにお二人がいらっしゃるのは、あくまでも世間体を保つためよ。」 けど、と言ってルイーゼは息を吸い込んだ。 「奥様は旦那様がどれほど奥様を愛していらっしゃることをご存知でないから、奥様は勝手なことをなさってるんですわ!奥様は節度がなさすぎます!」 ルイーゼのあまりの言いように、コリーヌがキレた。 「ちょっとあんた、黙ってきいてりゃ何よ、その言い方は!あんたは奥様がどれ程苦しんだかご存知ないから、そんな勝手なことが言えるのよ! それともなに?あんたカリンちゃんが好きだから、奥様のこと妬いてるんでしょう?」 コリーヌに痛いところを突かれ、ルイーゼは顔を赤くさせながら部屋を出ていった。 「ったく、なんなのよあの娘、どういうつもり?」 「カリンちゃんが奥様にベタ惚れしてるから、妬いてんのよ、きっと。」 「あんなんで奥様の侍女は務まらないわ。」 「その内暇出されたりして。」 女達はぶつくさ言いながら、眠りに就いた。 その頃、アンヌとカリンは、互いの体温を感じ合っていた。 「お前とこんなことをする仲になろうとはね。正直言って、驚いているのよ。」 「お、奥様っ!」 アンヌを抱くのに無我夢中だったカリンは、我に返り赤面した。 「でも、お前に会った時から分かっていたのかもしれないわ。」 アンヌはそう言って髪を梳きはじめた。 「ねぇ、カリン。私達はきっと前世で恋人同士だったのかもね。」 「だとすると、奥様が男で、僕が女?」 「そりゃそうでしょう。だってお前、頼りないんだもの。」 「はうっ!」 アンヌにさりげなく頼りないと言われ、カリンはヘコんだ。 「でも、いいわ。あのヘビ男よりマシよ。」 「奥様の意地悪っ!」 ふくれるカリンを笑うアンヌ。 その光景を、ルイーゼはドアの隙間から見ていた。 『女の嫉妬心はドロドロしててかなわん。』 (『火宵の月』花とゆめコミックス11巻・白泉社『p.64火宵の月-SPICY FRUITS-』より) 有匡さん、名言です。 ルイーゼはどす黒い嫉妬に包まれてます。 嫉妬や羨みで、人は鬼と化すのです。 モンテリオも、アンヌを愛していたけど、自分へのコンプレックスと、妻への嫉妬でどす黒い嫉妬に知らずのうちに包まれていったのでしょう。 人は『嫉妬』という感情を必ずしも持ってます。 私も自分と人を比べては、 「どうして私はこんなにできないのだろう。」 「何故あの子には彼氏ができて、私にはできないの?」 と、きりがないほど他人に嫉妬してます。 でも、人を羨み、嫉妬しても、自分のためにはならないと思っています。 自分は自分。 他人にはできないことを、探していったらいい。 これから、そのことを考えてみます。 ルイーゼはアンヌに対しての感情は、「隣の芝生は青い」という状態でしょう。 自分にはないものを持っている、それゆえに妬ましい。 嫉妬が憎しみへ、やがて戦争へ−。 負の感情は、きりがないです。 『火宵の月』で、殊音文観という人物が出てきます。 密教呪術の達人ですが、有匡さんに対して嫉妬心を持ち、有匡さんを陥れ、鎌倉から追い出します。 文観は陰陽道の大家・土御門家の出身で、たぐいまれなる能力を持つ有匡さんを羨み、孤児で身寄りがない自分に対してのコンプレックスがやがて家柄・能力、全てを持っている有匡さんにたいして嫉妬するようになったのでしょう。 嫉妬とは、負の感情が結集したものといってもいいでしょう。 あくまでもこれは私の見解ですが。 Novel&Message by 千菊丸さん |