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「お珍しいこと。あなたがこちらにお戻りになるなんて。」
「いやなに、お前の顔が見たくてな。」 アンヌはドアの近くに立ったまま動かず、夫を見据えた。 アンヌの夫・モンテリオ=サルディッナーレは、イタリア・ローマで名門の公爵家・サルディッナーレ家の次男であり、モンテリオはアンヌと結婚する前からソフィア=バルテミーと付き合い、彼女との間には3歳の息子がいる。 「お話って、なんですの?」 「ローマの母から手紙が届いてね。孫の顔が見たいって。」 アンヌは眉をひそめた。 アンヌとモンテリオは、結婚して以来、1度もベッドを共にしていない。アンヌは3歳の頃、母に捨てられ、仮定に夢を抱けない。 彼女が望むのは、宮廷内で絶大の権力を持つこと。 それ以外は、何も望まない。 結婚は取り引きにすぎない。権力を得るための。 「ルシファーをお義母様に見せてあげればよろしいじゃありませんか。」 「あいつはソフィアの子だ。母は、ソフィアを毛嫌いしていてね。 どうしてもお前との子でないとだめだそうだ。」 モンテリオはそう言うと、アンヌに近寄った。 「すぐに、とは言わない。だが私達の跡を誰が継ぐというのだ?」 「あなたは、私ではなくこの家が欲しいのでしょう?」 モンテリオの顔に赤みがさした。 「久しぶりに家に帰ってきたのだ。 私を楽しませるくらい、いいだろう?」 モンテリオはそう言って、アンヌを抱き締めた。 「お前は美しい・・フランス中どこを探してもお前のような女はいまい。 私がお前と結婚したのは、この家の財産はもちろん、お前が欲しくて結婚したのだ。」 モンテリオはアンヌの細い腰を好色な目つきで眺めながら言った。 アンヌは、夫への不快感で吐き気を催していた。 「凛としたお前が欲しくて母上に他の縁談を断ってまでお願いしたのだ。頼む、アンヌ・・」 姑のご機嫌取りに必死な夫。 黒い感情が一気にアンヌの喉元までせりあがってきた。 ビシリという鋭い音とともに、モンテリオは驚きで目を見開いていてアンヌを見ている。 彼の顔には猫に引っ掻かれたかのような傷がついていた。 アンヌは扇子を短剣のように構えた。 「私は今のままで満足ですわ。忙しいのでさがらせていただきます。」 アンヌは夫に背を向け、一度も振り返らずに部屋を出た。 あとに残されたのは、怒りで唇を震わせ頬の傷に手をやるモンテリオだった。 (なんて可愛い気がなく、生意気な女だ。) アンヌの夫・モンテリオが登場。 モンテリオとアンヌは政略結婚で結ばれたカップル。 モンテリオは結婚前に付き合っていた彼女がいて、子どももいます。 モンテリオはマザコンです。 母から孫の顔が見たいと言われたから、今夜だけはいいだろう?とアンヌに迫る彼。 アンヌはそんな夫にうんざりして扇子で夫の顔を打つ。 モンテリオはアンヌに一目惚れしたんですけどね。 アンヌを抱きたいんですけど、アンヌは子どもよりも仕事に打ち込む女なので、モンテリオにはいつもつれない態度です。 幼い頃の家庭環境の影響からか、アンヌは結婚生活をどこか冷めた目で見ているんですね。 夫には彼女がいて子どもがいるんだから、いまさら子どもはいらないだろうと考えてる。 夫婦の溝は、深まるばかり・・。 Novel&Message by 千菊丸さん |