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ウサギ狩りの日が来た。 アンヌはその日、朝早くから起き、いそいそと狩りが行われる邸へと向かった。 邸には、ソフィアの取り巻きや、アンドレが集まっていた。 アンヌがカリンを従えてやってくると、皆ヒソヒソと話し始めた。アンヌは平然とした様子で椅子で座った。 「ねぇ、アンヌ様が・・」 「少年を売り飛ばすなんて・・」 ミッテルランの息子・アンドリューを、アンヌが売春宿に売った話は、もう広まっている。 「あの人には、情がないのよ。だから子宝にも恵まれないんだわ。」 ソフィアの取り巻きの1人がそう言って笑うと、カリンは怒って立ち上がろうとしたが、アンヌが彼の腕を押さえた。 「おやめ。」 「だってあの人達・・」 「つまらない連中のことなど、放っておきなさい。私は、私がしたことは間違っていなかったと、胸を張って言えるわ。」 そう言ったアンヌの表情には、一瞬寂しげに見えた。 やがてウサギ狩りが始まった。アンヌは巧みに馬を操り、獲物を次々と仕留めた。 乗馬がからっきし駄目なカリンは、アンヌの後をついてゆくのがやっとだった。 「アンヌ様、待ってくださ〜い!」 「私をつかまえてごらんなさい。」 アンヌはそう言って笑い、馬を走らせるスピードを速めた。 そんな2人の姿を、アンドレは恨めしそうに見ていた。 アンヌは大いにウサギ狩りを楽しんだ。 姑のことも、夫のことも、跡継ぎのことも、狩りをしている間は忘れられた。 このまま、ずっとここにいられたら・・。 空に厚い雲がかかる。 「嫌ねぇ、雨だわ。」 「狩りは中止ね、戻りましょう。」 「アンヌ様には?」 「構わないわ。」 狩りは悪天候のため中止となり、アンヌはそれを知らずに森の奥にいた。 カリンはやっとアンヌに追いついた。だがアンヌはカリンをからかうように、また彼を引き離した。 アンヌは狩りに夢中になり、ぬかるみに気づかなかった。アンヌはぬかるみにはまって腰を打ちつけて落馬した。 「アンヌ様っ!」 落馬した主人を見て慌ててカリンが駆け寄った。 アンヌは痛みで顔をしかめている。 「足をひねったし、腰も打ったみたい。動かれないわね。」 雷が鳴り、激しい雨が降ってきた。 「人を呼んできます。」 「無駄よ。もう狩りは中止されて、今じゃ邸には誰もいないわ。それに・・」 アンヌはそう言って、うつむいた。 「誰も私を助けようだなんて思ってない。」 「どうして、そんなことをおっしゃるんです?」 カリンはそう言って、アンヌの手を握りしめた。 「あなたは、僕を助けてくれたじゃないですか。」 アンヌは目を閉じた。 「カリン、お前にだけ、話すわ。私の秘密を。」 雨が2人を包むかのように、降り続けた。 ウサギ狩りの部分は適当です。 次回、アンヌが『氷の悪女』となったいきさつ。 Novel&Message by 千菊丸さん |