PURE

第一幕
『再会』

第18話


作:千菊丸さん
ウサギ狩りの日が来た。
アンヌはその日、朝早くから起き、いそいそと狩りが行われる邸へと向かった。
邸には、ソフィアの取り巻きや、アンドレが集まっていた。
アンヌがカリンを従えてやってくると、皆ヒソヒソと話し始めた。アンヌは平然とした様子で椅子で座った。
「ねぇ、アンヌ様が・・」
「少年を売り飛ばすなんて・・」
ミッテルランの息子・アンドリューを、アンヌが売春宿に売った話は、もう広まっている。
「あの人には、情がないのよ。だから子宝にも恵まれないんだわ。」
ソフィアの取り巻きの1人がそう言って笑うと、カリンは怒って立ち上がろうとしたが、アンヌが彼の腕を押さえた。
「おやめ。」
「だってあの人達・・」
「つまらない連中のことなど、放っておきなさい。私は、私がしたことは間違っていなかったと、胸を張って言えるわ。」
そう言ったアンヌの表情には、一瞬寂しげに見えた。
やがてウサギ狩りが始まった。アンヌは巧みに馬を操り、獲物を次々と仕留めた。
乗馬がからっきし駄目なカリンは、アンヌの後をついてゆくのがやっとだった。
「アンヌ様、待ってくださ〜い!」
「私をつかまえてごらんなさい。」
アンヌはそう言って笑い、馬を走らせるスピードを速めた。
そんな2人の姿を、アンドレは恨めしそうに見ていた。

アンヌは大いにウサギ狩りを楽しんだ。
姑のことも、夫のことも、跡継ぎのことも、狩りをしている間は忘れられた。

このまま、ずっとここにいられたら・・。

空に厚い雲がかかる。
「嫌ねぇ、雨だわ。」
「狩りは中止ね、戻りましょう。」
「アンヌ様には?」
「構わないわ。」
狩りは悪天候のため中止となり、アンヌはそれを知らずに森の奥にいた。
カリンはやっとアンヌに追いついた。だがアンヌはカリンをからかうように、また彼を引き離した。
アンヌは狩りに夢中になり、ぬかるみに気づかなかった。アンヌはぬかるみにはまって腰を打ちつけて落馬した。
「アンヌ様っ!」
落馬した主人を見て慌ててカリンが駆け寄った。
アンヌは痛みで顔をしかめている。
「足をひねったし、腰も打ったみたい。動かれないわね。」
雷が鳴り、激しい雨が降ってきた。
「人を呼んできます。」
「無駄よ。もう狩りは中止されて、今じゃ邸には誰もいないわ。それに・・」
アンヌはそう言って、うつむいた。
「誰も私を助けようだなんて思ってない。」
「どうして、そんなことをおっしゃるんです?」
カリンはそう言って、アンヌの手を握りしめた。
「あなたは、僕を助けてくれたじゃないですか。」
アンヌは目を閉じた。
「カリン、お前にだけ、話すわ。私の秘密を。」
雨が2人を包むかのように、降り続けた。









ウサギ狩りの部分は適当です。
次回、アンヌが『氷の悪女』となったいきさつ。

Novel&Message by 千菊丸さん


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