|
「天使さまだ、天使さまだ。」 男の子はそう言って、カリンの髪をつかんだ。 「いっ、痛い。」 金髪を思いっきりひっぱられ、カリンは悲鳴をあげた。 男の子はカリンによじ登り、髪をひっぱった。 (誰か、助けてえ〜!) 男の子は、髪の毛をひっぱるのをやめようとしない。それどころか、ますます面白がってカリンの髪をひっぱる。 このままでは、髪が抜けてしまう。カリンがそう思ったとき、アンヌが正面の階段を下りてきた。 「ルシファー、何をしているの、おやめ。」 アンヌが冷たい声でそう言うと、男の子はそそくさとカリンから離れた。 「全くどうしようもない子だこと。母親の躾がなってないわね。」 フンと鼻を鳴らしてアンヌが言うと、男の子は向こうへと駆け出していった。 「あの子は?」 「前 馬車の中で言ったでしょう?愛人の子のルシフェルよ。顔は可愛いけど、育ちの悪さがにじみ出てるわ。」 吐き捨てるようにアンヌは言った。 「アンヌ様、あの子が嫌いなんですか?」 「そうね、どちらかと言うとあの子の母親が嫌いよ。卑しくて教養のない女・・」 扇子をあおぎながら、アンヌは言った。そしてフランチェスカのいる部屋を見た。 「あの女もそう。卑しい者同士、仲良くなるのは当然ね。」 「でもソフィア様もフランチェスカ様も貴族でしょう?どうしてそんな事を・・」 「今は、ね。」 アンヌはそう言うと、意地の悪い笑みを浮かべて続けた。 「ソフィアの母親の家は、金で身分を買った、山賊の成り上がり者。それにあの女もそう。 あの女はいかがわしい街の女。モンテリオの父親があの女を妾にしたから、今の地位があるのよ。」 アンヌはそう言って馬車に乗り込んだ。カリンは慌てて彼女の後を追った。 「明日はウサギ狩りね、楽しみだわ。」 アンヌはそう言うと、カリンの額を見た。 「その入れ墨も生まれつき?」 「はい。」 カリンの額には奇妙な目の文様をかたどった入れ墨があった。 「生まれた時からあって、親戚からは『忌み子の証』だって・・」 「そうかしら?幸運に恵まれているという印じゃなくて?」 「冗談はやめてください。」 カリンの言葉にアンヌは耳を貸さず、馬車から降りた。カリンも主に続いて降りた。 馬車が着いたのは、王宮ではなかった。 飾り窓がある壮麗な館だった。 「ここは?」 「ついて来ればわかるわ。」 そう言うとアンヌは邸の中へと入っていった。 邸は、美少年達で溢れていて、彼らは裸同然の格好をしていた。 (もしかして、ここは・・) カリンは嫌な予感がした。 その予感は的中した。 邸の広場の向こうから、男がカリンの方へと歩いてきた。 その男に、カリンは見覚えがあった。 Novel&Message by 千菊丸さん |