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アンヌはベッドで寝返りを打った。 姑が突然訪ねてきた意味は、わかっている。 モンテリオが手紙にでも自分への苦情を書いたのだろう。フランチェスカはモンテリオを溺愛していた。 フランチェスカとは、反りが合わない。結婚の挨拶に行ったとき、アンヌはフランチェスカと一生わかり合えることはないだとうと悟った。 フランチェスカの生きがいは、子どもを産み、立派に育てることだ。だがアンヌは、子どもを産み育てることなど、彼女の人生設計の中には入れていない。アンヌは、出産や育児は無駄な物として考えている。 アンヌは、権力こそが自分を幸せにできるものだと信じていた。権力を持てば、確固たる地位に就け、男性の所有物として空しい人生を送らないはずだ。 いままで独りで生きてきた。モンテリオには何の愛情も持っていない。これからも、独りで生きてゆける。 アンヌは目をゆっくり閉じ、深い眠りについた。 カリンはためらいがちに、アンヌの部屋のドアをノックした。 だが、返事はない。 カリンがそっとドアを開けて部屋へと入ると、ベッドにはアンヌが安らかな寝息を立てていた。 カリンはそっと枕元にワインを置いた。 その時、アンヌがカリンの腕をつかんだ。 「え゛っ」 突然のことでカリンはうろたえた。 アンヌは普段見せる険しい表情とはかけ離れた恋する乙女のような、はにかんだ笑みを浮かべていた。 「ああ・・やっと来てくれたのね、ルイ。」 そう言ってアンヌは自分の唇をカリンの唇に重ねた。 「ちょっ、ちょっと・・」 カリンはアンヌの唇の感触にうろたえた。アンヌは、カリンの腕の中でまた寝息を立てた。 カリンは、アンヌをベッドに寝かせようとしたが、アンヌはカリンにもたれかかり、ビクともしない。 (どうしよう・・) その時、ノックの音がして、ルイーゼが入ってきた。 「奥様、失礼を・・」 ルイーゼは抱き合っているカリンとアンヌを見て赤面し、部屋を出ていった。 「ち、違うんです!」 カリンは叫んだが、もう遅かった。 翌日、邸中にアンヌとカリンが熱烈に抱き合っていたという噂が広まった。 「カリンちゃん、聞いたわよぉ。」 「あんたアンヌ様としたの?」 「人肌で癒すなんて、やるわねぇ〜!」 アンヌに朝食を持っていく途中、カリンはコリーヌとタルミーナにさんざんはやされた。 「ち、違うったら!アンヌ様が寝ぼけて、それで・・・」 「誰が寝ぼけてたですって?」 アンヌがドア越しに3人をにらんでいた。 「おっ、奥様っ!」 「朝食が襲いと思ったら、こんなところで油を売って・・さっさと来るのよ!」 アンヌはそう言ってドアを閉めた。 「お姐さん達のせいですからね・・」 「あたし達、知らないわよ〜」 カリンに降りかかったとんでもないトラブル。 ツイてないですね、カリンちゃん。 Novel&Message by 千菊丸さん |