|
アンヌは雉のローストを頬張っているかりんを見ながら、包み焼きのパイを開いた。 カリンはアンヌがパイを開いたことも知らず、クランベリーパイを食べていた。 その時、彼の鼻先を何かがくすぐった。カリンがパイの隣にあるクルミをとろうとすると、手を何かにかまれた。 「いたっ」 カリンはそう言ってクルミを取り、ちらっと目を向けるとー 包み焼きのパイには、隅までリスがぎっちりとひしめきあっていた。 「ひわ゛ぁ!」 カリンは驚き、腰を抜かしていた。アンヌが噴き出していた。 「ひっかかったわね。さっきのお前の顔、みものだったわ。」 扇子で口元を隠しながら、アンヌ腹を押さえていた。 「また僕をからかったんですねっ!」 カリンは頬をふくらました。 「だってお前、面白いんだもの。」 アンヌはまだ笑っている。目元には涙がたまっている。 「アンヌ様の意地悪・・」 そのとき、マリーが慌てた様子で入ってきた。 「お、お嬢様!」 「なぁに、マリー?どうしたの、そんなに息を切らして。」 「フ、フランチェスカ様が・・」 「あの女がどうかしたの?」 マリーが答えようとしたとき、彼女の背後に人影が現れた。 「お久しぶりね、アンヌ。」 「ええ。」 フランチェスカ=サルディッナーレは、白く混じった黒髪を結い上げ、骨張った顔でアンヌを見た。 「モンテリオにさっき会いましたよ。お前、モンテリオを殴ったんですって?」 「あの人が先につかみかかってきましたのよ。」 アンヌはそう言ってフランチェスカを見た。 「アンヌ、あなたはモンテリオの妻なのよ。どうしてモンテリオを立てようとしないの?」 「孫の顔を見せろと催促をしにわざわざローマからいらしたの?」 アンヌの口調は次第に刺々しくなっていった。 「もう子どもができていいはずよ。それなのにお前ったら、政治にのめり込むばかり。お前は女なのよ、アンヌ。子どもを産み育てるのは女の仕事でしょう?」 フランチェスカの言葉に、アンヌは顔をしかめた。 「私は、子どもなど望んでいませんわ。あの人と結婚したのは、家の利益のためだけですわ。」 アンヌは一言一言、扇子を叩きながら言った。 「あなたは権力のことしか考えてないのね。」 フランチェスカはアンヌをバカにしたような口調で言った。 「ええ、私は権力に魅入られてますもの。」 そう言うとアンヌは椅子から立ち上がり、部屋を出た。 「気分がすぐれないので、休ませていただきますわ。」 「アンヌ様っ、お待ちをっ!」 ルイーゼが慌ててアンヌの後を追った。 「全く、可愛い気のない女。」 フランチェスカはそう言って雉のローストに手を伸ばした。 嫁vs姑。 嫌味を言いにわざわざローマから来た姑。 それを嫌味で返す嫁。 嫌味の応酬ですね。 アンヌがまたカリンをからかって・・。 この回ではカリンはリアクション王です。 次回、式神シスターズの生まれ変わりが出ます。 Novel&Message by 千菊丸さん |