|
花梨が匡峰を連れて行ったのは、近所の神社だった。
花梨は匡峰に、家計が苦しくて女学校を辞めざるおえないことを話した。 「お母さんは私に、女学校を卒業して貰いたいんだと思うんです。でも、うちのお店は最近経営が苦しくて、それどころじゃ・・」 「そうか・・だからあんなに暗い顔を・・」 匡峰は、そう言って唸った。 「『いわしろ』の女将さん夫婦には、何かと世話になってるし・・このことは、考えておくよ。」 そう言って匡峰は去っていった。 「若様に学費のこと、話したのかい?」 花梨が匡峰に会って話したというと、菊は目を丸くさせた。 「あの若様がねぇ・・」 「お母さん、匡峰様のこと知ってるの?」 「知ってるも何も、匡峰様のことはちっちゃい時から知ってるさ。」 菊はそう言って煙草を吸った。 「匡峰様のお母様・・匡峰様が7つの時に亡くなられているけど・・その人は、うちの隣の『やましろ』の娘さんだったのさ。大恋愛をした末に、土御門家に嫁に入って、嫁ぎ先で散々いびられてこき使われて、しまいにゃ心を壊して死んじまったのさ。あたしは匡峰様にとっちゃあ母親みたいなもんなんだよ。」 「へぇ、そうなの・・」 花梨は、匡峰の過去を聞いてそう言った。 「若様は、なんて?」 「『考えておく』って・・」 「そうかい。匡峰様にとっちゃあ、長い間世話になったあたしに恩を返したいんだろうねぇ。」 菊はそう言ってため息を付いた。 Novel&Message by 千菊丸さん |