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「ねぇ凛夏ちゃん、あの人誰?」
花梨がそう言って匡峰を見ると、凛夏は大笑いした。 「花梨ちゃん、知らないの? あの人は土御門匡峰様よ!」 「土御門って、あの土御門?」 土御門財閥は、新橋界隈ではちょっと名が知れているどころか、その名は日本中に轟いていた。 今や土御門財閥は、土木・建築業、レストラン事業など、数々の事業を手掛けているお大尽様なのだ。 「そうよ、知らなかったの?」 「ううん、そんなんじゃないけれど・・なんだかあの人とは、前にも会ったような気がして・・」 「そう・・」 店が終わった後、一晩中花梨は匡峰のことばかり考えていて眠れなかった。 それは、匡峰も同じだった。 花梨と目があった時、匡峰は懐かしいものが急にこみあげてきたのを感じた。 今とは違う時代に、どこかで会った様な気がするのだ。 (あの子には惹かれるものがある。) 隣では、妻の綾香が寝息を立てていた。 綾香とは、政略結婚だ。 匡峰は、気位が高いだけで何の取り柄もない綾香を嫌っていた。 それに、綾香には男がいるということを、匡峰は知っていた。 (私は、大事な選択を間違えたのかな・・) 匡峰はため息を付いて、眠りに就いた。 「あなた、どこ行くの?」 「ちょっとな。」 匡峰はそう言って『いわしろ』へと向かった。 Novel&Message by 千菊丸さん |