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第五幕
『炎の涙』

第一章
第20話


作:千菊丸さん
1920年1月。

あの大戦から2年、レイチェルは大勢の記者に囲まれ、新作の出版記念記者会見に臨んでいた。
「今回の作品は、戦争を題材にしたものだそうですね?」
「はい。あの戦争からもう2年も経ちますが、私のまぶたには病院で見た光景がいまだに焼き付いて離れません。この作品を通して、戦争の愚かさ、悲惨さを皆さんに考える機会を持っていただきたいと思い、ペンを執りました。」
レイチェルはそう言って背筋を伸ばした。
その姿を、エドとボリニュイは会場の隅から見ていた。
「君はあの戦争のこと、どう思っているんだい?」
ボリニュイの問いに、エドはうつむいて言った。
「もう、あんな悲しい思いをするのはごめんだよ。」
「そうだね。」
ボリニュイは戦争が終わってしばらくしてから、軍を辞めた。
そのかわりに、医師となって戦争で傷ついた兵士達の心のケアを行っている。
「もう、行こうか。」
「うん。」
エドとボリニュイは互いに微笑み合い、会場から去った。
レイチェルの新作『炎の涙』は、戦争の悲惨さと愚かさを多くの人に伝え、400万部のベストセラーとなった。
ウィリーは相変わらず、あの日のままの状態だった。
だがエドの顔を見ると時折笑顔を見せていた。
そんな中、フランソワとレイチェルが相次いでこの世を去った。
レイチェルは臨終の際、ボリニュイの手を握ってこう言った。
「エドを、あなたに任せるわ。」
2人の後を追うように、ウィリーも2ヶ月後、この世を去った。
「もう、終わりだね。」
エドはウィリーの葬儀の席でそう呟くと、ため息を付いた。
ウィリーの葬儀からしばらく経った後、フランスのドルヴィエ家が後継者がいないため没落したという知らせをエドは受け取った。
「どうするんだい? 君はローズワース家を継ぐ気かい?」
ボリニュイの言葉に、エドは「継がない」と答えた。
「もう貴族中心の世の中じゃなくなってるし、これからは自分の好きなこと、したいんだよ。」
「そうか・・」
ボリニュイはそう言ってエドにキスした。
「何すんだ!」
「キスさ。」
「このっ、変態っ!!」
そう言ってエドは力一杯ボリニュイに平手を打った。





−第五幕『炎の涙』第一章・完−
感想は千菊丸さんまで
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第一章はほのぼのテイストで終わらせました。
第二章は久しぶりに舞台を日本に戻します。
太平洋戦争下の日本を舞台に、財閥の御曹司・匡峰と、アメリカ人と日本人のハーフの孤児・花梨との悲しく切ない恋物語です。 全17話を予定しています。

Novel&Message by 千菊丸さん


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