|
「何かしら?私 今日は予定が立て込んでいて、あなたに構っている暇はないのだけれど。」 アンヌはそう言ってモンテリオの左目を見た。 「カリン、お前今日は何を食べたいの?」 「えっ?!」 突然 話題をふられ、戸惑うカリン。 「今日はね、雉のローストがあるのよ。それに、クランベリーのパイも。」 「あ、あのう・・」 「モンテリオ、今日は道化師の真似でもなさるつもり?左目だけ黒く塗りたくって。」 「アンヌ、お前というやつは・・」 「カリン、昼食だわ。」 アンヌはモンテリオの左目を見て笑いながら食事をしに邸へ戻った。 「すぐに来なさい。雉のローストがあなたを待っているわよ。」 アンヌはそう言って、部屋に引っ込んだ。 「疲れた・・」 朝から奴隷商人に連れ回され、アンヌに買われ、アンドレに迫られ、道化師に会い・・。 まだ一日は終わっていないのに、どっと疲れがたまっている。 カリンは寝台に身を投げ出した。 寝転がると、やっぱり広い。 生まれてすぐに両親を亡くし、親戚にたらい回しにされ、奴隷商人に売られて世界中を連れ回されたカリンにとって、一息つける場所を持てたのは初めてだった。 ゆっくり休もうかと、目を閉じようとした時、ノックの音がした。 「こんにちはぁ!あたし、ルイーゼ。あなたは?」 「カ、カリン・・」 「カリンちゃんね、よろしくね。広い部屋ね、もしかしてカリンちゃんの?」 カリンはルイーゼのハイテンションな感じについていけず、うなずくだけだった。 「ねぇ、奥様って、いつもああなの?」 「奥様?ああ、あの意地悪な魔女ね。」 ルイーゼはそう言って鼻を鳴らした。 「あたし、いつもあの女にいじめられてるのよ。洗濯物干すときも、お料理はこぶときも色々言われてさ・・田舎から出てきてメイドやりたくてここに来たんだけど、やめたいわ〜」 ルイーゼはそう言って愚痴るだけ愚痴ると、ドアに向かった。 「カリンちゃん、また来るわね。」 そう言って去って行くルイーゼにカリンはあっけにとられていた。 「なんか、元気な人・・」 カリンは部屋を出て1階へと向かった。 嘱託には雉のローストとクランベリーパイ、そして包み焼きのパイが置いてあった。 「さあ、いただきましょう。」 「旦那様をお待ちにならなくても?」 「あの人はどこかで食べているわよ。」 テーブルの向こうに、ルイーゼがいて、カリンに手を振った。 カリンは雉のローストを食べた。 雉の肉汁が、カリンの舌を満たした。 「おいしい!」 「もっとお食べなさい。あなたにはたくさん働いてもらわないと。」 そう言ってアンヌは包み焼きのパイを切り始めた。 パイの中ではかすかに音がしていたのだが、カリンは気づかなかった。 Novel&Message by 千菊丸さん |